チャート更新2012年6月

またも遅ればせながら、ですが(毎回こう書いてる気がする...)6月のチャートを。

1.アニス&ラカンカ / Aniss & Lacanca E.P.
http://www.sunrain-records.com/catalog-3783.html

ニュージャージーの女の子二人(という設定)によるデュオのデビューEP。アナログレコードがチャートの1位を獲得したのは、初めてだと思います。陽気さとセンスがきらきらと輝く曲、そして60'sテイストを徹底的に意識した音作りももちろんのこと、採算度外視で作りこまれたアートワークもお見事。これはアイテム感抜群ですねー。ちなみにアナログレコードがチャートの1位を獲得したのは、初めてだと思います。(←後記:これは誤情報でした。2012年3月に「片想い/踊る理由」が1位になっていました。失礼しました)


2.WATER WATER CAMEL / おんなのこがわらう時
http://www.sunrain-records.com/catalog-3734.html

先月は1位だったキャメルの新譜。首位は譲りましたが、コンスタントに売れ続けています。齋藤キャメル氏の声、各楽器のサウンドメイクとアンサンブルの妙、そしてエンジニアリングの腕前、すべてにおいて妥協なく追及されたソフトでなめらかな質感が、聴き込むほどにサイケデリックにも響いてくるのが不思議です。


3.ザ・なつやすみバンド / TNB!
http://www.sunrain-records.com/catalog-3763.html

TNBのデビューアルバム、全国的な話題となっているようですが、サンレインでも好評発売中です。さわやかな声、スティールパンをフィーチャーした、ドリーミーですこしトロピカル、そして疾走感も忘れない絶妙なアンサンブル、特筆すべきは、この作品をMIX CDと一緒に買ってくださるかたが何人もいらっしゃったこと。オーソドックスな「うた」が、ダンスミュージックのファンにも届くんだということが嬉しいのです!

4.洞 / 発見
http://www.sunrain-records.com/catalog-3735.html
先週に引き続きチャートイン。長野県在住の宮下和夫氏によるユニット、初の全国流通盤。"ベッドルーム・ポップス"と呼ばれる音楽はいくつもありますが、独特な言語感覚と、霧がかった長野の風景を想起させるような映像的サウンドスケープ、そしてひと匙加わったエモさ、ドリーミーな音楽の底にこういう要素が潜んでいて、それが癖になるように思います。梅雨から夏にかけても重宝しそう。


5.緋と陽 / タイヨウニホエロ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3762.html

今回のチャートのなかで、ぶっちぎりで熱いのがこの作品。hig(ex.WEED、スペースカンフーマンMC)/HIROKI/山本"カブレラマン"昌史(NATSUMEN)から成る3人組の自主制作盤プログレッシヴな楽曲を卓越した演奏力で組み上げてゆき、最終的に「うた」のエモーションにつなげる、たとえるならば、縄文時代の火炎式土器(火が燃えているような文様がくっついているやつ)を見るような構成力、さらには呪術的とさえいえる力に満ちた一枚です。あまりライブをしない彼らですが、聴けば聴くほど気になる...

6.BIOMAN / MISSANGA
http://www.sunrain-records.com/catalog-3742.html

neco眠るのメンバーでもあり、DJ、農家と様々な顔を見せる奇才が「歌」に取り組んだ作品。お兄さんであるOORUTAICHIにも共通する、無国籍で陽光にあふれたトラックメイクも素晴らしいのですが、なによりBIOMANの迷いない声がよいのです。ライブはしない、と言っておられましたが、もったいないなあ。現在売り切れ中ですが、近日再入荷しますので、お待ちください。


7.シャムキャッツ / BGM
http://www.sunrain-records.com/catalog-3226.html

ロングセラーアイテムです。シャムキャッツが野外でライブをしたいという思い付きを実現させるまでのドキュメンタリー仕立て+名古屋K.D.japonでのライブ映像を収録。マジックアワーの河原で演奏する彼らの姿は、なかなかに感動的ですよ。


8.惑星のかぞえかた / 惑星のかぞえかた EP
http://www.sunrain-records.com/catalog-3559.html
東京の男女デュオによる自主製作盤が久々にチャートインです。憂いを帯びたフィメール・ボーカルがなぞるメロディと、ささやかながら確かに歌を支えるベース、これはたしかに雨の降り込める部屋にとても合いますね。


9.mmm / five till (remastered edition + bonus tracks)
http://www.sunrain-records.com/catalog-3668.html
mmmのファーストCDRをリマスタリングし、ボーナストラックを大幅に加えた作品。初期のmmmのみずみずしさ、控えめななかに確実に光る個性などが堪能できる一枚。"five till"が廃盤になったときに、ネットオークションでは高額な値がついたりしましたが、もうこれで安心です!


10.星の王子さまたち / ロックバンドEP
http://www.sunrain-records.com/catalog-3774.html
ストレートしか投げられない、その潔さが「かっこいい」としか言いようのない京都の4人組による自主製作盤。タイトル通り、ロックンロールへのいかんともしがたい愛情があちこちに散りばめられています。なんとなく「これ以上、上手くならんといてほしい…」と思ってしまうのは僕だけでしょうか。


次点 peno / nebula
東京で活動する、5人組(現在は4人編成)のファーストが鳥獣虫魚より。マルチプレイヤー二人を擁することもあり、多様な楽器を組み合わせてのスマートな室内楽が展開されています。やはり面白いのは「うた」の扱い。楽器を背景にするのではなくて、「音楽」のなかですべての音を同値に扱っているような聴こえかた、それでいてやっぱり「うたもの」であることが揺らいでいない、これはなかなかできることではないなあと思います。要注目。

5月号のお話。

さて、間もなく6月号を配布しはじめようかという頃に、先月号のおさらいです。
もうお持ちの方は解説に、まだの方は参考に(1500円以上のお買い上げでバックナンバーのリクエストも受け付けています!)どうぞ。
5月らしい「晴れ」の空気を感じるものをメインでセレクトしています。
サブタイトルは、みんなタッチは違えど、風が吹いているみたいな音楽だなーと、ふと思ったので。



月刊サンレイン 2012年5月号 "A VARIETY OF WIND"
#1 nagaco / can do / "Benjamin"収録
術ノ穴より注目のビートメイカー nagaco のデビュー作が到着。全編を通じて流麗なピアノとしなやかなビート、叙情的なサウンドスケープに覆われた作品ですが、ゲストボーカル参加のうたもの、チップチューンを使ったゲーム音楽エレクトロなど、一筋縄ではいかない意外性がとても面白いです。今回は、アルバムの最後をかざる落ち着いたトーンの曲を収録させていただきました。


#2 ヘスペシャンカ / 雲にのる / "拝啓、無気配"収録
大阪の4人組によるファーストアルバムが、ギューンカセット参加のmediscoより。軽やかでありながらも、どこか霧がかったしっとりさもある音、そのひとつひとつを追いかけているうちに、知らない世界へ迷い込んだような気分になる、不思議な魅力の1枚。収録は、滑るようなアルペジオから始まり、弾けそうで弾けない「引き」の美しさに満ちた一曲です。


#3 TamTam / Stop The Alarm / "Meteorite"収録
平均年齢20代前半のヤング・ダブバンドによるデビュー作から。HAKASE-SUNプロデュースのアルバムは、ヘヴィなダブから攻撃的なダンスホールまでを飲み込んだセンスあふれるミュータント・レゲエの博物館的1枚ですが、そのなかでもいちばん穏やかな表情を見せるラヴァーズ・チューンを収録させていただきました。


#4 Turntable Films / Misleading Interpretations / "Yellow Yesterday"収録
京都の3人組による初のフルアルバムから収録。活動当初からオルタナ・カントリーバンドとしての色が強かった彼らですが、このアルバムではそんな枠から一気に飛び出すような多彩で良質なポップ・ミュージックをこれでもかと展開してくれています。軽快なアコギのカッティングから始まるこの曲は作品の冒頭を飾るにふさわしい高揚感です。


#5 キツネの嫁入り / 結局、そう / "俯瞰せよ、月曜日"収録
こちらも京都の4人組による、セカンドアルバムからの収録となります。アコースティックなサウンドながら、プログレグランジといったジャンルから影響を受けた"異質"さが際立つ音楽を聴かせてくれる彼らの、もっとも先鋭的なマインドが伝わってくるこの曲。ゲストでたゆたう・イガキさんがバイオリンで参加。疾走感あふれる無国籍かつパンキッシュなナンバーです。


#6 3月33日 / 空の真下 / "ミソラシロ"収録
バンド名は3月ですが、彼らの奏でるほどに「春」を見事反映する音楽はないんじゃないか、ときどきそう思います。青い(そしてまだ夏ほどに色濃くない)空の向こう側突き抜けてゆくようなやわらかな歌。初の全国流通盤のジャケットも、活版印刷で青空が映し出されています。収録はまさにそんな彼らの、タイトル通りの一曲。


#7 アラカキヒロコ / 夜の唄 / "かぎりある物語"収録
沖縄県出身のシンガーソングライターによるデビュー・ミニアルバムより。力強く普遍的な「歌」の力を感じさせる彼女の声、そして飾りすぎることなく奇をてらうこともない、プレーンなアレンジが素直にその魅力を花開かせています。こちらに収録したのはミニアルバムの最後を飾る、しっとりと、でも足取り確かな一曲。高音のロングトーンがよいのです。


#8 middle9 / Deja / "Cettia Diphone"収録
先日大阪・服部緑地での主催フェス「room special」も成功させた、関西を代表するインストバンドmiddle9が、3年8カ月ぶりにリリースした新作から。ピアノとヴィヴラフォンのゴージャスかつアトモスフェリックなコード感、リズム隊のタイトなグルーヴ、そしてトランペットのスモーキーでいなせなメロディ、しっとりと洒落ているのに体を揺らしてくる感覚は彼らならでは。まずはこの曲を聴いてみて!


#9 DELTAS / 5月の[魚]/// / "√DL_TS 2"収録
福岡の二人組による自主製作盤から。2台のラップトップとギター、ベースによって組み上げられたDELTASのサウンド。インダストリアルでノイジーで攻撃的な側面と、この収録曲のようなリリカルで優しく繊細な一面が同時にあるところが、彼らの大きな魅力だと思います。この曲で気になったらぜひCD-Rも試してみてください。


#10 マコメロジー / 私の稜線 / "マ コメンタリー"収録
5月号の終わりは、鳥獣虫魚からリリースの、ギターと歌の女子二人組によるデビューアルバムより。静かで、生々しく、コトバも音もどれ一つとして聴きもらせない、緊張感と安らぎが交互に訪れるようなアルバム、そのなかでも一番耳を澄ましたくなる一曲を収録させていただきました。ハーディガーディのきしむようなノスタルジックな音が、生きています。


映像は、マコメロジーのライブ。京都、UrBANGUILDです。

チャート更新 2012年5月

4月はバタバタして飛ばしてしまいました(ごめんなさい)ので、2か月ぶりの解説となります。
今月は新譜/新入荷作品がたくさんチャートイン。さっそく見ていきましょう。


1.WATER WATER CAMEL / おんなのこがわらう時
http://www.sunrain-records.com/catalog-3734.html

去年『分室』が年間チャート1位となるほどの売れ行きをみせたWATER WATER CAMELが、待望の全国流通盤となる4枚目のアルバムをリリース。大手レコードショップでも大展開されていたであろうに、ウチで買ってくださった方、本当に感謝です。内容の素晴らしさはあちこちで話しすぎた感もあり、このオーソドックスでスタンダードなポップ・アルバムをいまさらコトバで補完する必要もないかとも思いますので、一点だけ。特典の森ゆにさんによるカヴァーCD-Rは、引き続き付きます。初回限定にしておくのはもったいないクオリティですので・・・ぜひお求めください。

2.洞 / 発見
http://www.sunrain-records.com/catalog-3735.html

『山と部屋』『まぼろし』と、自身が主宰する「これレコード」から2枚のリリースを経てのプレス盤フル・アルバム。ついに、という感がありますが、手作り&ロウファイ感あふれるCD-Rの世界から、ぐっと霧が晴れたような、それいて「ベッドルーム・ポップス」の親密でファンタジックな空気は残したままの、まさに洞を「発見」する一枚です。こちらも特典(シャムキャッツ夏目君/ゆーきゃん/metoba traffic参加のカヴァー&リミックスCDR)継続配布中。それにしても、長野は歌心のあるアーティストが多いなあ。どんな秘密があるのか、知りたいです。



3.Turntable Films / Yellow Yesterday
http://www.sunrain-records.com/catalog-3689.html

京都のオルタナ・カントリー・グループによるフル・アルバム。楽曲の良さは同時代のバンドのなかでも屈指なのではないでしょうか。グッドメロディ、アイディアにも富み、コーラスワークまで含めて実に豊潤なアレンジ、去年から会うたびに「アルバム、まだなん?」「まだやねん...」という会話を交わしていましたが、まさに時間をかけて丁寧に作ったからこそ、の一枚。特典は(特典の話ばかりですみません)シラオカ小池君とボーカル井上君による相互カヴァー、ゆーきゃんもおまけで付いたCD-R。

4.BIOMAN / MISSANGA
http://www.sunrain-records.com/catalog-3742.html

neco眠る/DJ/農家として多方面で活躍中のBIOMANがシンガー・ソング・ライターとして発表した自主制作アルバム。兄であるOORUTAICHI君にも通じる、あの底抜けに明るく、国籍不明なサイケデリックな歌心が、この人の血にも流れていないわけはないのですが、お兄さんよりさらにどっしりと据えられたフォークネスと、天然素材電子音響が響き合うサウンドはまさにBIOMANの専売特許だなあ思います。ひとことに歌と言っても、それぞれの歌がいろんな気配を湛えているので、聴く側の好みも別れがちなのですが、この作品は全方位に向けてオススメできる無農薬栽培。



5.DELTAS / √DL_TS 2
http://www.sunrain-records.com/catalog-3741.html

福岡在住のデュオによる自主制作盤。なんの予備知識もなく聴いたのですが、びっくりしました。凶暴なインダストリアル/ノイズが吹き荒れるかと思えば、キラキラとひとつひとつの音が粒になって輝くようなエレクトロ・シューゲイズまで。こういうひとたちがときどき突然変異のように現れてくる福岡シーンはやっぱり面白いなーと再確認。これから東京でも積極的に活動してゆくそうですので、みなさん要注目ですよ。

6.キツネの嫁入り / 俯瞰せよ、月曜日
http://www.sunrain-records.com/catalog-3736.html

ギューンカセットから2枚目のリリースとなるフルアルバム。長谷川健一さんをして「アコースティック楽器でグランジをやっているかのよう」と評されていますが、楽曲の尖り具合が生楽器のアレンジによって絶妙な手触りや質感を獲得していて、非常にかっこいいアンサンブルになっています。歌詞に対するこだわりも特筆すべき点、やはり彼らはパンクバンドなんだなあと聴き返すたびに思います。特典はインタビュー小冊子。



7.王舟 / Thailand
http://www.sunrain-records.com/catalog-2947.html

サンレイン史上、1、2を争うロングセラーアイテムとなるCD-Rが久々にチャートイン。鳥獣虫魚からのセカンドとなるこのCD-Rでは、現在のバンドセットでのライブの方向性の礎となっている、アメリカーナやオルタナ・カントリーをベースにした豊饒でダイナミックなアンサンブルを味わえます。それにしてもこの人の声は天から恵まれた、としか言いようがないですね。現在欠品につきオーダー中ですが、はたして再入荷はあるのか...

8.ホライズン山下宅配便 / りぼん
http://www.sunrain-records.com/catalog-3754.html

とんちレコードの中核を担う楽隊の2012年リリース・フルアルバムは、同じく東京の良心とも言うべきcompare notesから。謎多きパーティ・バンドとして語られることの多い彼らですが(たしかに2月のシングル『期待』はその通りだった)、この最新作ではホライズン山下宅配便流のサイケデリックといいますか、プログレ室内楽カンタベリー。ジャーマンロックなども全部ひっくるめて渋みを出しつつなおかつ激烈にポップ!という唯我独尊なサウンドを大展開。や、天才です。ほんとに。

9.ゆーきゃん / ロータリー・ソングズ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3453.html

昨年10月リリースのミニアルバム。他にあんまり買うところがないからか(泣)、管理人から直接買おうと思ってくださるからか、コンスタントに売れています。ありがたいことです。エマーソン北村、田代貴之、高橋健太郎、見汐麻衣(埋火)というすばらしいゲストのさりげなくも良い仕事が、歌にまろやかさを与えてくれています。ジャケットはタテタカコさんとのコラボなどでも知られる京都の画家・足田メロウさん。



10.V.A. / TAC-HATS CD
http://www.sunrain-records.com/catalog-3729.html

北九州のライブハウス、黒崎マーカスがキュレーションしたコンピレーション。売り上げは全額、東日本大震災の復興支援の為に寄付されます。店長の村上さんが「楽曲重視でセレクト、捨て曲なし。」とおっしゃっていましたが、どの曲もポップに突き抜けた、かつどこか男気(繊細なうたものであっても、さらには女性アーティストも!)を感じさせる、じつに北九州らしいオムニバスになりました。おすすめです!

次点 マコメロジー / マ コメンタリー
http://www.sunrain-records.com/catalog-3696.html

鳥獣虫魚からリリースの二人組。イノセンス、アーティスティックなたたずまい、ほんのりとした憂い、それらがふたりの歌とギターの網目のなかにすっと入りこんでいて、聴いていると、ときに安堵をおぼえ、ときに胸をかきむしられそうになる。ドラマチックな演出がない分、うたとことばと楽器が放つ「情感」がダイレクトに伝わるのでしょうね。

4月号のお話。

5月も半ばになってしまいましたが、先月の月刊サンレインの解説です。
簡単なジャケに簡単なクレジットはしてありますが、どんな曲なんだろう?と気になった方は参考にしてください!
5月号も、まもなく全曲の許諾をいただけそうです。明日には配布開始できるようにもうひと頑張り!
お待ちくださいませ。


月刊サンレイン 2012年4月号『春盤』収録曲解説


1.園部信教/東京の空『旅』 収録

mojocoのボーカリストでもある園部くんが古里おさむさんのプロデュースで制作した自主CD-Rより。すーっと抜けてゆくハイトーンヴォイスが気持ち良いんです。歌詞ではまだ春になりきらない、冬の終わりごろの空を歌っているのですが、南国生まれのこの人の持つ温かみのせいか、4月の空気にとてもよく合うなあと思い、一曲目。


2. Myth Folklore / Smartphone / DEMO CD-R 収録

ex.henry tennisの奥村さんを中心に結成されたソフトロック/インディポップ・トリオによる初音源から。ヘンリーテニス時代から定評のあった奥村さんの作曲力はこのユニットでも花開いており、グッドメロディ、ツボを得たアレンジ、さらには収録の4曲を通じて流れるふわりとした多幸感が大きな魅力です。まずは冒頭を飾る1曲をご紹介します。


3.DJ Doppelgenger / Consciousness Rebel / 『Paradigm Shift』 収録

DJとして世界各地を渡り歩き、唯一無二でで無国籍なスタイルを追求してきたドッペルゲンガー氏の、初となるオリジナル作品から。ベースミュージックの重量感と浮遊するシタールの音色の対比、そしてその周りに塗り重ねられた幻惑させるようなサウンドスケープ、ちょっと毒々しさもある百花繚乱具合が印象的な一曲!


4. MANT / ひとくいそう/ 『MANT』 収録

ogre you assholeの出戸君のお兄さんでもある出戸努さんがフロントマンをつとめる長野/山梨のロックバンドによる自主制作盤から。重さと幻想性を持って立ち上がってくるこの曲は、八ヶ岳周辺の霧がかった景色を思わず想起させるようなイマジナティヴな出来です。このアルバムは、80年代後半から2000年代初頭のUSインディを吸収した上で生み落とされた、日本語ロックの理想的なかたちのひとつだと思います。


5.宝生久弥+カクマクシャカ / きみいろ / 『きみいろ』 収録

東京を拠点とするトラックメイカーと沖縄在住のラッパーによるコラボ作。
哀愁とノスタルジーを艶めいて聴かせる宝生さんのトラックメイクに、エモーションの結晶のようなカクマクシャカさんの声が載ります。どちらが主役というわけでもなく、お互いを(ほとんど意識せずして)引き立たせ合うような理想の共作曲。


6. クガツハズカム / すべて / 『kugatsuhascome』 収録

きのこ帝国のヴォーカル、佐藤さんによるソロユニットのCD-Rより。一度拝見したライブがあまりに素晴らしかったので、まだ入荷予定もないのにお願いし倒して収録させていただきました。このCD-R、きのこ帝国のセルフカヴァー等も収録されており、そちらも非常によい(バンドとはがらりと変わった世界)です。時期は未定ですが、なんとか卸していただこうと思っていますので、お待ちください。


7.シグナレス / クラ / 未発表曲デモ

あら恋meetsゆーきゃん」の自主制作CD-Rには、どの曲が入っているか分からないという当たりくじ的ボーナストラックが収録されていました。この「クラ」はその際に使用された一曲です。ジョーン・バエズのようなプロテスト・フォーク風のメロディと、初期のあらかじめ決められた恋人たちへを特徴づけるようなシネマティックなエレクトロ・ダブが同居した、過剰な情感。


8.LOOLOWNINGEN&THE FAR EAST IDIOTS / 針金の木 /『1st CD-R』 収録*本サンプラーのために新録したテイクです

ex.マヒルノの赤倉くんを中心に結成された4人組の初音源に収録されていた曲ですが、このサンプラーではその後録音しなおした別テイクを収録。その骨の部分はジャーマンロックやカンタベリー系からの影響を強く感じますが、現代詩にも似た、文学性の濃い歌詞の世界も非常に印象的で、とても面白い。「針金の木」」という描写は枯れ木について歌ったのかとも推測できますが、春の夕暮れの少し残酷な匂いにもマッチするなあと思い、今月号に入れてみました。



9. 三村京子 / 空の茜 / 『みんなを屋根に』 収録

現在は活動休止中の三村京子さんの2010年作より。この人の歌は、聴くたびに、深いなあと思います。深いところから聴こえてくるというか。そこにいるはずなのに、もっと体の奥の奥から声が出ているよう、というか。けして「儚い」声質ではないのですが、コトバ遣いやメロディとも呼応しあう不思議なゆらぎがそんな風に感じさせるのかもしれません。個人的に作品中で一番好きな曲を、今月号の最後に持ってこさせて頂きました。

GW期間中の営業につきまして

大型連休が近づいてきました。急にあたたかくなって、真昼はすでに初夏の陽気です。


連休期間中の発送につきまして、お知らせします。

管理人(ゆーきゃん)は、4/30〜5/2の間、レコーディングの為、山梨県に行ってきます。
WATER WATER CAMEL田辺玄さんのホームスタジオにて、4枚目のアルバムの制作です。


また、4/28、5/4、5/5には、欠伸ACBISのライブが東京・名古屋・京都であります。
日暮愛葉さん率いるフィメール・トリオTHE GIRLとのスプリットツアーです。


この間、発送は代理スタッフが担当、もしくはお休みとなります。
GWの前半〜中盤にかけてお届けが遅れることとなり、大変申し訳ありませんが、ご容赦いただけますと幸いです。


また決済につきましては、経理の都合上、祝日は銀行振込の入金確認が遅れる場合があります。
たとえば5/3に入金いただいても、5/7まで決済完了の通知が管理人の元まで届かないということもありますので、
あらかじめご承知ください。


ちなみに私事ですが、今回のレコーディングメンバーは、


ピアノが森ゆにさん
ベースがFUN☆ANAにも参加の田代貴之くん
ドラムがsistertail/LLama/YeYeバンドなどの妹尾立樹くん
そしてエンジニアでもある田辺玄さんにもギターなど弾いていただこうと思っています。


先日ツイッターでさらりと書きましたが、来月リリースのWATER WATER CAMEL『おんなのこがわらう時』には恒例のサンレイン×JETSET共同特典がつきます。内容はまだお話しできませんが、レコーディングの合間を縫って、いろいろ段取りしたり、試してみようと思っています。待て、続報。

チャート更新 2012年3月

3月も面白いタイトルがいっぱい入ってきましたー。新しくチャートインしたものは6タイトル。今回はレビューの転載に加えて、(わりとどうでもいい感じの)ひと言を添えてみています。お時間のあるときにそれぞれチェックしてみてください。


1.片想い / 踊る理由

片岡シン(vocal)+MC.sirafu(vocal,guitar)+issy(piano)+伴瀬朝彦(bass)+大河原明子(horn)+遠藤里美(sax)­+あだち麗三郎(drums)+オラリー(vocal,tambourine)からなるオンリーワンな楽団、片想い。メロウソウル、ディスコ、AOR色も滲む日本語ポップのビッグ・チューンがシングルカット!盟友・ceroも全面バックアップで、ぬくもりと多幸感がもう盤面に乗りきらずに零れ落ちているのが見えてきそうです!カップリングの「センチメンタル☆ジントーヨー」ももちろんのことながら名曲!!

多めに仕入れたのですが、あっという間に売り切れてしまいました。…まあそうだろうなあと思いつつ、ネットオークションですでに値段が跳ね上がっているのを目撃すると、ちょっと悲しくもなります・・・

YOUTUBEにはMVの他、ライブ映像も上がっているので、こちらでお楽しみください!


2.うつくしきひかり / S.T.
http://www.sunrain-records.com/catalog-3619.html

ピアノ+スティールパン、そして歌。男女ふたり組ユニット「うつくしきひかり」、やわらかであざやかなデビュー盤。旧・グッゲンハイム邸での録音、エンジニアは西川文章氏、スティールパンとピアノによるこのアンサンブルは、まさしく「発明」だと思います。迷いなく、いそぐことなくまっすぐ歩いてくるナカガワさんの歌もすばらしいの一言。

このアルバムに関連して、レーベルオーナーの小田さんがご自身のサイトで綴られたテキスト。お時間のあるときに読んでみてください。

http://mapup.net/wp/2012/03/sitchou/

サンレインでも「試聴用音源」を上げる、ということを何気なくやっていたのですが、たしかに、と身につまされることも多々。ウェブ試聴が出会いの機会であることもまた胸を張って言えるのは確かながらも、やっぱり「音」については、制作者(アーティストとレーベル)の意図に沿ったMVやSOUNDCLOUDMYSPACEを極力使うべきで、そのぶん、ぼくは出来るだけ誠実な紹介文を綴らなくてはなーと、襟を正しました。


3.kyooo / 鳥が歌う
http://www.sunrain-records.com/catalog-3579.html

同じく鳥獣虫魚のSSW・フジワラサトシのアンサンブルにバイオリンとサックスで参加したり、即興と室内楽をテーマにした王舟の実験的なアンサンブルにサックスで参加したりもしているkyoooさんによる初の流通盤。全編を通じて落ち着いたトーンですが、ときに儚く、ときに無邪気に響く歌声が、サッドな感触だったりリラクシンな雰囲気だったり、曲にあわせてに少しずつ色合いを変えてゆくさまが非常に魅力的です。
エンジニアは、たゆたうの『糸波』も手掛けた大城真氏。この小さいけれど豊かな声、こんなふうに表情やニュアンスをそのまま「音源」に閉じ込めるのは、非常に難しかったのではないかと思います。虹釜太郎さんが「大城真さんはテン年代以降もっとも重要なアーティストになる」と予言した人の耳にはやはり脱帽せざるを得ません。
また制作にはフジワラサトシが全面協力、NOb(ケイドロック)oono yuuki、ナガヤマタカオや宮本善太郎といった若き音楽家たちのサポートも、ツボを得て(あるいは絶妙な外しで)楽曲をより豊かに彩っています。
夜の深い時間、あるいは明け方、耳を澄まして聴けば聴くほどにその魅力が増してくるに違いない、小さな名盤だと思います!

ふた月続けての3位。興味深いのは、ご注文の履歴を観ていると、びっくりするくらいに、日本全国、男性のかたからも女性のかたからもオーダーをいただいているのです(年齢までは分からないのですが...)。大きさや派手さではなくて、シンプルで飾らない、あるがままの声こそが、遠くまで届くという証なのでしょうか。引き続きオススメ。


4,永田一直 / 永田一直の世界 DJ MIXシリーズ Vol.13 〜和ラダイスガラージ篇〜
http://www.sunrain-records.com/catalog-3569.html

永田一直の大傑作シリーズ、2012年のリリースは人気国産ダンスミュージックパーティー「和ラダイスガラージ」から生まれた、最新ミックスシリーズ第13弾!!

サンレインで扱っているMIXの傾向としては、和モノが人気です。そのなかでも、なかでも高円寺時代から色々とお世話になっている(インストアイベントもやっていただいたことがあります)永田さんの本シリーズは、13作どれも豊かな個性と切り口で、ぜひコンプリートを目指していただきたい連作。MIXCD文化の入門としても最適ですよ!
ちなみに、商品レビューのテキストは、永田さんご自身の、トラックリスト替わりのヒント。これで曲が分かった人はすごいですが、分からなくてもなんとなく雰囲気伝わるでしょう?


5.欠伸ACBIS / 1st DEMO
http://www.sunrain-records.com/catalog-3623.html

ゆーきゃん/スーパーノア/LLama/OUTATBERO/ときめき☆ジャンボジャンボのメンバーからなる5人組の初音源。
ベーシックトラックを一発録音、バンドのダイナミズムを大事にしながら、いろいろ実験を潜ませてあります。60,70,80,90's、それぞれの時代のエッセンスをごちゃまぜにして漉し取ったような古典的かつレアな感触の3曲(シグナレスのセルフカヴァー含)。廃物利用のプラケース再生・手塗りのジャケットはすこしづつ違ったデザイン。生産に時間がかかってしまうので、あるときに買っておいてください。

スプレーで頭痛くしながら作っています。いまのところライブ会場以外ではサンレインとJETSETのみの取り扱い。通販だと選んでいただけないのが残念でもあるんですが、ガチャガチャの気分で買っていただけると幸いです。


6.よしむらひらく / 2011
http://www.sunrain-records.com/catalog-3523.html

象徴的なタイトル、震災後に生まれた5編の独白。ドラムに岸田佳也、ピアノとコーラスにアラカキヒロコを迎えた他はすべて一人で手掛けた、とてもパーソナルでストイックなCDR作品。定評あるソングライティングのセンスも今回はとくにエモーショナル、無駄のないアレンジも素晴らしく、でも最後はやっぱりこの「声」の力だな、と。

3月で生産終了となったこのCD-Rですが、ギリギリ3月30日に最後のオーダーをしました(欲張って多めに)。近日中に再入荷があると思いますので、お買い逃しの内容にお願いしますね。


7.mmm / ほーひ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3578.html

前作『パヌー』に引き続き、下田温泉(ドラム)、千葉広樹(ベース)、宇波拓(エンジニア、ギター他)を基本メンバーにして、POPOから江崎將史さんと喜多村朋太さん、とんちレコードからはMC. sirafu & 伴瀬朝彦のお二人、そして青木タイセイさんに鳥獣虫魚の柱谷さんと、気のおけない仲間たちに囲まれて作ったセカンドアルバム。フレンドリーで、茶目っ気がいっぱいな空気がそのままパッケージされています。
猫が日向ぼっこしているような、といいますか、あたたかくてやわらかい声の魅力もますます活かされており、ときおり差し挟まれるシリアスな表情にハッとしたり、やんちゃな楽曲がフックになったりしながら、最後まで一気に聴ける一枚。

ロングセラー中。特典のCD-Rも好評で、嬉しいです。サンレイン独自で(最近はJETSETと共同が多いですが)作る特典は、特典というよりも、ただ単純に「せっかく作品が出るんだから、なんかやりましょうか?」「面白そう!やりましょう!」みたいなノリで生まれてくる遊びだったりするので、結局は近しいアーティストとの間でしかできないのですが、毎回音源やインタビューが上がってくるたびに、やっぱりこの人たち面白いなあ―と、再確認。


8.ホライズン山下宅配便 / 期待
http://www.sunrain-records.com/catalog-3610.html

前作「Hoca」で人気を得、踊り歌い続けてきた「期待」を多数のゲストミュージシャンを迎えて新録。ホーン隊12名、コーラス隊30名というボリューム。対照的に、4人だけのタイトな演奏で洗練されたグルーヴを聴かせる「大恋愛」、チェロ、クラリネットオーボエ、トランペット、トロンボーン、チューバによる交響曲的アンサンブル、さらにサンプリングなど、様々な技巧がちりばめられた意欲作「ガラスの階段」、どれも味わいの違う3曲。 ジャケットイラスト小田島等、デザイン島田陽介、エンジニアには松石ゲル、PVをvideotapemusicが編集、最強のバックアップによる作品となった。(レーベルインフォより転載)

「遊び」や「喜び」がスコアとサウンドの隅々まで通った音楽、といえば、このバンドをはじめとするとんちレコードの面々にかなう人たちは、そうそういないんじゃないでしょうか。このPVを観てるだけで、心がすっとするんですよねー。


9.NRQ / のーまんずらんど
http://www.sunrain-records.com/catalog-3603.html

吉田悠樹(二胡マンドリン) 、牧野琢磨(エレクトリック・ギター)、中尾勘二(ドラム、アルト・サックス、トロンボーンクラリネット) 、服部将典(コントラバス)からなる4人組のセカンド。ゲストにはMC Siraf(スティールパン/トランペット)、mmm(ヴォーカル/フルート)と、完璧すぎる布陣で練り上げられた、無駄のない、気負いのない、非常に瀟洒で風通しの良い一枚です。岩田江さんの名曲「うぐいす」の名カヴァー、mmmが歌うヴォーカル曲「ノー・マンズ・ランド/アイ・ワズ・セッド」など見事なフックを交えてあっという間の12曲。題字/ライナーノーツは五所純子さん、ジャケット写真は坂本慎太郎ソロ作を撮った写真家、塩田正幸さん。

ごめんなさい!うっかりバックオーダーが遅れてしまったため、目下売り切れております...近日入荷予定ですので、しばらくお待ちくださいませ。

これは2011年3月30日に高円寺の無力無善寺で行われたライブの模様。MC.sirafuがスティールパンで参加されています。素晴らしい!!


10.(((さらうんど))) / S.T.
http://www.sunrain-records.com/catalog-3629.html

鴨田潤(イルリメ)×Traks Boysによるシティ・ポップ・ユニットのデビュー盤!!デビュー曲「サマータイマー」から、高城晶平(cero)と共作した「タイムリープでつかまえて」、佐野元春「ジュジュ」のカヴァーなど全10曲。ソングライティングの"キレ"も、トラックメイクも、カシーフ(Stringsburn)君のギターも、アチコ(Ropes)さんのコーラスも、お見事としか言いようのない、朗々とした2010年代のシティポップがここに。初回盤特典にはmp3ダウンロードコード付き。アルバム収録曲の別テイク2曲と、メンバー3人によるアルバム全曲解説のラジオ(50分超!)が楽しめます。

個人的に「ラジオ」というものが好きでして、とくにプロのパーソナリティがいない、海賊版みたいのとか、ラジオCDRとか、ひとがしゃべっているのを聴くと安心します。(((さらうんど)))の特典mp3のラジオも、この人たちの人柄がよく出ていて楽しいですよ。本編の良さに関しては言わずもがな!


次点は、
池永正二 / Dubbing
http://www.sunrain-records.com/catalog-3616.html
仕様はMIXですが、あら恋の別作品、という気分で聴いても楽しめますよ。今月は2曲で30分越えのEP『今日』もリリースということで、こちらも期待高まります!

3月号のお話。

 2月号の解説を3月に入ってやっとこさ書きあげる(しかも2月号のタイトル表記を間違えていたのを1か月も放置していた)、こんなことをやっていちゃいけない、と思い、出来上がったばかりの3月号の解説を勢いで書きました。


 今月のサブタイトルは「日常」です。あれから1年後の3月、日本各地で流れている音楽の「日常」。とはいえただの独断にもとづくチョイスで、厳密には2010年以前に収録された作品もあり、いままでのチョイスと具体的には何が違っているのか、説明もできないのですが…あえて言うならば、「暮らしてゆく」ということの一側面を描いたり、吐き出したり、図らずも音に現れている楽曲をコンパイルした、ということでしょうか。

 まあ、「管理人が出会ったおすすめ音源を紹介してゆく」特典サンプラーですので、これ以上ゴタクをならべてもボロが出るだけです。さっさと解説に移りましょう。


収録曲解説!!
1.24ページ / 取りあえずな今に / 『24ページ』収録

京都で結成された「24ページ」。前作までは男女ツインボーカルの、YO LA TENGOをさらにゆるふわにした印象のバンドだったのですが、その後二人になり、ぐっとソリッドさが増しました。収録曲はそんなアルバムのなかでも白眉の一曲。社会人ふたりが現実とストラグルしなくてはならないブルースと、それでも生活の隙間をぬって音楽をつづける意思がエヴァーグリーンなサウンドのなかからじわっと溢れだしてきて、やたらと泣けます。


2. Ryo Hamamoto & The Wetland / Sally Lee / 『Ryo Hamamoto & The Wetland』収録

mooolsのギタリストでもあり、そのギターの腕前は先日ジャパンツアーに帯同したOWENをして「うらやましい!」と言わしめたハマモト君。バンド名義での初アルバムは変則チューニングのアシッドフォーク〜ジェフ・バックリイのように崇高で美しい曲まで、実にバラエティに富んだものになっています。収録曲は70年代・西海岸のSSWの翻訳のようなストーリテリングがとても小気味良いフォークソング


3. HOMM∃/ いいこだよ / 『NO IMAGE』収録

いま、いちばん「ライオット・ガールズ」という呼称を体現するのはこの3人ではないかと思います。媚びず、てらわず、セックスアピールをしない。怒りやフラストレーションを強烈な表現に練り上げて疾走させる彼女たちのサードアルバムからの収録曲は、ニッポンのニューウェイウ黎明期への補助線も引けそうなどこか懐かしいメロディが、パンキッシュで重心の低いサウンドと相まって恐ろしくも超絶にポップです。


4. Mad Bridge /理想の今日/ 『Bivouac』 収録

岩手在住のクルーによるアルバムより「震災前に作っていた曲で、7インチをきっていて 3月にリリースを予定していた」という曲を収録。地震があって物流
が止まりリリースを一旦延期したものの、やはり『被災地から発信しよう』との思いが募り、シングルカットに踏み切ったのだとか。粋なトラックと、MCたちの朴訥とした味わい深いライミングが、ポジティヴなメッセージをお題目でなく聞かせてくれます。「シンプルな理由 好き嫌いが基準 あいも変わらずお子様でちゅ」なんてラインが個人的に特に気に入っています!


5.DJ MOTIVE / Birdy / 『Trip Do Sunday - mohawks compilation no.1』収録

岐阜在住のDJ/PRODUCER、MOTIVEさんが主催するレーベルmohawksよりリリースされたレーベルコンピから。日曜の昼に聴くのにぴったりな、リラクシンな楽曲たちが多彩なジャンルにわたって収録されています。オシャレなのに肩肘張らず、そっとそこに置いておける音楽たち。このレーベルは信頼できる!収録は主宰MOTIVE氏による一曲、流麗で軽快なピアノが4つ打ちとループを下敷きにしたトラックときれいなコントラストを作っていて、これは日曜の午後でも、とくに夕暮れに近い頃のBGMですね。


6. 惑星のかぞえかた/ 嵐が丘/ 『惑星のかぞえかた EP』収録

都内を中心に活動する男女デュオによる初の自主音源から。ゑでぃまぁこんやmuffinに通じるアシッドフォーク感もありつつ、霧がかったサイケデリアというよりは、端正で風通しのよい、それでいてひとの気配が薄い、不思議な魅力を放っています。郊外の平日、誰もいない公園なんかを思い出すのは、ぼくだけでしょうか?収録曲「嵐が丘」のほか「午前中の時間割」「少年少女」といったリリカルなタイトルも素敵だと思います。


7.iss LAICHELS / on fire / 『1st rhythm session』 収録

福岡のスリーピースfolk enough井上さんを中心に結成されたトリオの初デモから一曲。この人の美学なのか、ライブはあえてかっちりさせず、ラフでフリーキーな雰囲気で時にはひとをケムにまくこともあるのですが、音源はエディットやループ、ダビングなどを駆使して存分にそのセンスを炸裂させてくれています。「30分くらいのセッションが、エディットで3分の曲になった」ということもざらにあったのだとか。音を「遊び」ながら組み上げてゆく、ロウファイなスタイリッシュさ、たまりません。


8.micemohee / smile /『2003-2008』収録*近日入荷!!

同じく福岡在住のSSW、178が在籍するバンド、micemohee(マイスモーヒー)。タイトル通り03年から08年までに録音された音源をコンパイルしたCD-Rから一曲。ボガンボスなどを彷彿とさせるロックンロールも、すこし歌謡テイストのガレージもあり、アノラックやギターポップの影響を見せる日本語インディ・ロックもあり、6年の歳月のうちにバンドが刻んできた様々な音楽が楽しめます。収録はスカスカな脱力感と無邪気なポップセンスが同居する名曲。


9. 古宮夏希&コークスが燃えている! / 旅への思い/ 『古宮夏希&コークスが燃えている!3』収録

「2」「3」を同時発売した東京のスリーピースバンドの、「3」のほうから一曲を。満天のロマンティシズムのなかに、ちくりと胸を刺す喪失感。この晴れ渡った青さが2作品中、色々な表情を見せながら全編を覆っていて、聴き終えたのちには嫌が応にも「青春って、こういうことだったよなあ」と振り返らずにはいられません。「全少年少女待望の」というキャッチフレーズは、とりもなおさず「かつて少年少女だったすべてのひと」に向けて奏でられているということなのでしょう。


10. ゆーきゃん /空に沈む / 『ロータリー・ソングズ』収録

清濁併せた色々な「日常」は、サンレインに入荷した作品の数だけあるにひとしくて、到底精査しきることができませんでした。まだまだ収録したいものがたくさんあって、あれもこれもとキリがないので、最後は自分なりの「ある日の空」を歌ったこの曲をピリオドがわりに。キーボードはエマーソン北村さん、レコーディングに使われた高橋健太郎さんの家は、その後取り壊されてもうありません。



映像はMAD BRIDGE「理想の今日」(勝手に上の橋VER.)。
オフィシャルPVとはバージョン違い、盛岡市内各所でのロケ映像が使われています。