山本達久vol.23

今月からいつもより多めにお店に入ることになりました。宜しくお願いします。
現在、試聴機として使っていたPCの修繕中なので、聴きたい商品があればスタッフに気軽に言って下さいね。店内でお好きな音量でおかけしますんで。あと、JAZZ喫茶や、ROCK喫茶的に、聴きたい音源あれば店内BGMとしてかけますので、○○喫茶感覚でご利用ください。言うなればオルタナ喫茶ですかね。そろそろファミコンも導入しようかと画策中。昼間から酒呑みたい人も募集。出会い喫茶状態ですね。良い意味で先が見えません。


オススメ商品


大島輝之/into the black

日本のアンダーグラウンド・シーンにおけるポスト音響系の最重要バンドsimのギタリスト、大島輝之が初のソロ・アルバムをリリース。ゲストに大友良英芳垣安洋、植村昌弘ら日本を代表するインプロバイザーのほか、Tsuki No Waのメンバー、やデトロイトテクノと共振するサックス奏者藤原大輔など総勢、19名が参加し、50〜60年代のジャズへのオマージュというテーマのもと、アップデートされた現在の即興演奏、音響系のメソッドによって、更に新しい次元へと突入したポスト・ジャズ・サウンドを繰り広げます!(タワレコ評より)


タワレコ評にもあるとおり、Guest陣の豪華さには目を見張るものがありますが、かなり贅沢な使い方をしていると思います。脱個性を狙っているように思えるのだけれど、全部そぎ落としたところにある真の個性を垣間見ることが出来ると言うか。僕も何回か大島さんのprojectで演奏したことがありますが、譜面に興してあって完璧に演奏するところと、若干エゴを入れて良いとこのバランス感覚が人間臭くて、こういう音楽なんだけど妙にほっこり感があるみたいな、僕的には名盤だと思ってます。


大島輝之 myspace
http://www.myspace.com/oshimateruyuki



店には置いていないオススメCD


町田良夫/Hypernatural: #3

2008年4月にフランスの実験音楽レーベル、Baskaruより町田良夫のソロアルバム「Hypernatural #3」がリリースされた。日本配給は、p*dis。「Hypernatural」と題し1999年に自主リリースしたCD Boxセット(カメラ・オブスキュラに見立てた黒いCDケースの中に、自分の絵画作品のミニブックレット、カラスの羽、藁半紙のクレジットシート、CDが入っている)、2001年にドイツのSoftl Musicよりリリースされた「Hypernatural #2」に続いて、このハイパーナチュラル・シリーズ3部作の完結編であるのが「Hypernatural #3」である。この作品は、数年前には完成していたものの、ずっとリリースされていなかった。
このシリーズは1997年頃から取り組み始めた録音素材による音響コラージュである。90年代半ばに中国の少数民族に関する映像取材で2ヶ月間、中国に滞在したことがきっかけといえるかもしれない。この経験を通して、日本文化の源流について多くを学んだ。作品からの影響としては、80年代後半から絵画においてラッセル・ミルズやイアン・ウォルトンが試みていたこと、ライアル・ワトソンやアニー・ディラードの本、ルパート・シェルドレイクの考え方、日本文化の源流を真摯に調査し解き明かそうとしている萩原秀三郎の活動に影響を受けている。音作りは、大竹伸朗やミュージック・コンクレートの作品のような偶然や意外性の組み合わせによるコラージュではなく、テーマに基づいた映画的な手法、メタファーや意味による素材の結びつけが、また曲のタイトルがこの作品の重要なポイントだった。Hypernaturalのテーマは「東アジアにおける記憶」、Hypernatural #2のテーマは「透明な存在」、Hypernatural #3のテーマは「忘却」である。日本のルーツで始まり、より広い意味へと繋がれる流れである。
中国への映像取材以来、国際協力の仕事でアジアやアフリカ各国に行く機会に恵まれた。その際、各地で珍しい音をフィールドレコーディングすることができた。この素材をベースに、日本を含む東アジアで光の象徴として使用されてきた銅鑼(ドラ)を中心として、民族楽器、エレクトロニクス、ノイズなどをコラージュした。HypernaturalとHypernatural #2は、RolandのSP-808というDJ向けのサンプラーで組み立てられている。この機械は、4マルチトラックレコーダーとしても使用できて、その4トラックしかないという制限が重要なものだけに執着するということに役立った。また、スピードを落とすと、独特のローファイ感が出てこれもよかった。Hypernatural #3はPCベースだが、SP-808やMax/MSP、Liveなども使用している。HypernaturalとHypernatural #2では、銅鑼の音を使用したが、Hypernatural #3では、銅鑼からスティールパンの音へとって変わって、しかもMax/MSPでプロセッシングし、音の原型が崩れかけているような音を使用している。
僕の音楽制作は、この10年で録音をベースとした音響コラージュから、スティールパンの即興演奏へと移り変わっていった。ハイパーナチュラルは録音芸術としてのコンポジション、そして自分にとって音絵画であった。現在は、より伝統的な意味での音楽として音に向き合っている。しかし、ハイパーナチュラルの制作があったことで、この考えに至るまでになった。そういう意味で、このシリーズは、僕の制作原点と言える。

ハイパーナチュラル・シリーズは、意味や象徴として使われる音の断片によるコラージュだ。イメージやタイトル同士の、また曲と曲同士の関係性と通して「自然」というテーマを表現する試みである。ラッセル・ミルズ、イアン・ウォルトンライアル・ワトソン、アニー・ディラード、ルパート・シェルドレイクや萩原秀三郎に触発され、1997年に始められた。vol.1(1999年自主リリース)のテーマは「東アジアにおける記憶」、vol.2(2001年、Softl Music)のテーマは「透明な存在」、そして、この3部作、vol.3のテーマは「忘却」である。

忘却は、事象と時間との間に生じる相互関係の特質である。忘却はポジティブな側面をもっている。時間経過の中で自然現象として現れ、新しい世界を構築する一要因となる。自然は、無数の異なる記憶-忘却のサイクルから成り立っている。気象予報が簡単ではない。なぜならそのとても複雑な自然は、根本的に「ハイパー」な存在で、何が起こるかわからないからだ。

2007年6月 町田良夫 (本人のHPより)


僕はこっちのスチールパン奏者町田さんが好きなのですが、この作品は本人がフェネスっぽいと言ってたように、電子音響コラージュちっくなCDで、個人的にはフェネスっぽいのは表面的な音の解釈だけで、フェネスは殺伐としていて乾いているのに対してこのCDは有機的で少し湿り気があるなという印象があって、理由はよくわかりませんが、こっちの方が聴いてて気持ちがいいです。バランス感覚だと思うのですが、確信が持てません。町田さんはドイツのなんかのフェスで山本精一さんとDuoをされたそうですが、今、個人的に一番見たい組み合わせなだけに、ほんと自分がオーガナイズしても良いから機会を作りたいくらい見たいです。色んな側面がある人ってミュージシャンじゃなくても好奇心をそそられるアレです。

町田良夫 myspace
http://www.myspace.com/yoshiomachida



山本達久