先日ライブでご一緒させていただいたMt.Eerie氏がもともとKレーベル所属だったこともあり、
いろいろとCDを引っ張り出して聴いていたところ、どうにもやっぱりBEAT HAPPENINGが凄いなあと、思ったのです。


1982年に結成され、92年までに5枚のアルバムをリリース。
ロウファイ、オルタナティヴ、グランジというあの時代の音楽性の礎を築きながら、
徹底したDIYアティチュードで巨大化することを一切拒否し、
解散の発表も公式にないまま、いつの間にかメンバーが別の活動に移って行った彼ら。
ギターボーカルで、Kレーベルのオーナーでもあるキャルヴィン・ジョンソンの別ユニット作品達も含め、
7e.p.からいろいろと日本盤が出ています。


カート・コバーンがとてもリスペクトしていたという話をはじめ、
YO LA TENGOBMX BANDITS、SPECTRUMなどジャンルを越えて多数のアーティストにカヴァーされている楽曲、
そのいくつかはYOUTUBEに落ちています。

今日はその中から二作品、二曲を紹介します。



BEAT HAPPENING / JAMBOREE
http://www.sunrain-records.com/catalog-705.html

吉田肇によるレビュー!
はい、もうかなり思い出の一枚であります!(笑)1988年リリースのこのセカンドアルバムが18歳の吉田少年の耳に届くはずもなく、このアルバム収録の「インディアン・サマー」を90年代にユージニアスがカバーしていたのを聞き、すぐさま遡っての出会い。当時、福岡でインディ・ギターバンド系のレコードがプレイされるクラブ・パーティに行くのがクールだと思っていた自分にはガツンとストライクのスーパーアンセムだったわけです。あの頃、ギターポップを聴きながら首をかわいらしく横に振ってピョンピョン踊る女子を見て「ああ、これもパンクの一つの形なんだ!」と開眼した次第。ギターポップとはパンクロックの続き、終わらないパーティの続きだったわけです。抵抗の祭り。スッカスカのしょぼい演奏、アレンジなんて恐らく皆無で思いつきと行き当たりばったりで鳴らされるこの音達のなんと純粋無垢な事か!あれっきり大人になること止めてしまった首謀者のキャルビン・ジョンソンはその後もずーっとこのまま。おかげで吉田もずーっとあのまんま(笑)。



このアルバムに収録されている名曲、"Indian Summer"のPV。


そして、これはLUNAによるカヴァーです。




BEAT HAPPENING / Black Candy
http://www.sunrain-records.com/catalog-706.html

佐野央によるレビュー!
ビート・ハップニングのバンド史上最もダークでアグレッシブ、な作品と言われている1989年リリースの3枚目。ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンやヨ・ラ・テンゴ、BMX バンディッツソニック・ユースのサーストン・ムーアとキム・ゴードンなどに多大な影響を与え、それぞれがカヴァーをしていたりする。後に来るグランジを予見させるガレージライクなヘナヘナなヘタウマっぽいサウンドは実は非常に聴き心地が良く聞いていると夢見心地になれる。ダークと評されているのが不思議になるようなサウンドスケープである。  (佐野)



タイトルチューンでもある"BLACK CANDY"。ライブ映像です。


SONIC YOUTHによるカヴァー(動画ではなく静止画+音楽です)。



カヴァーの個性あふれる解釈も見事なのですが、
オリジナルのスカスカで、やる気がないのかあるのか分からない音(そして表情も絶妙)!
そこから滲み出してくる人間力と無邪気さによって成立する「音楽」にはもう驚嘆せざるを得ません。


人間の感性は放っておくとだんだんと飽和して、過剰なほうへ過剰なほうへと志向が向かいにがちになりますが、
エクストリームなもの、詰め込まれたものだけが「圧倒的」ではないのだということを思い知らされる気がします。