自己紹介

ゆーきゃんがオレの文章のファンだというので、ここで時々文章を書くことになった。オレは赤い疑惑というバンドをかれこれ10年くらいやっていて、現在は売れないレーベルの営業として正社員で働いている。自分のことをアクセル長尾ということにして、バンドではボーカルとギターをやっている。


アクセル長尾である。よろしく。あと2月もすると32歳になる。世間的にいったら、いい大人である。


最近、赤い疑惑で作った曲で「ダーティーサーティー」という曲があるけど、オレの30代はマイナーコードである。まだ30代始まって2年も経たないのに、オレの30代はマイナーだぜ、と威張る必要はまったくないのだが、まったく将来が見えない不安には常に脅かされ、結婚する約束だった彼女には油断をした拍子に見限られ、唐突にお別れすることになり、三十路虚しく実家に帰る自分の人生を「ダーティーサーティー」と笑い飛ばさずにはおれなかった。


早速暗いハナシになってしまったが、生きているのである。


5年前、赤い疑惑は「東京フリーターブリーダー」という名盤を世にドロップした訳だが、それがきっかけに、赤い疑惑は「フリーター擁護バンド」みたいな見られ方をされて正直当時は困ってしまった。オレは身分で人を蔑むなというのを、ただ言いたかっただけであったが、「東京フリーターブリーダー」は一人歩きして、オレ達メンバーは労働嫌いなダメなヤツみたいなレッテルを貼られたこともあった。社会派の人間に眼をつけられることもあった。デモのような場面で何故か「東京フリーターブリーダー」がかけられた、というような事もあったらしい。社会派に眼をつけれるのはダメなヤツのレッテルよりは嬉しいけど、赤い疑惑が左翼のバンドだと思われたら、それも困ったもんだ。これは高田渡の「自衛隊に入ろう」が放送禁止歌にされたり、左翼だとか右翼だとか思われたりしたことと同じようなことじゃないだろうか。オレは高田渡が大好きなので同じ道を歩めて光栄です、ワタルさん。


最初に、オレは今正社員で云々、と自己紹介した訳であるが、オレは今、フリーターでなくて正社員として働いているのである。正社員として働き始めた頃、mixiで知らない人から「アクセルさんは正社員になられたのですか」というような、特に悪意を感じたわけではなかったのだけど、実際そういうメールをもらってオレは唄の与える影響について感じない訳にはいかなかった。オレも昔は正社員になることに抵抗を感じていた部分があるので、フリーターで頑張っているバンドマンなんかからしたら「アイツ就職したらしーよ」って文句も言いたくなるのも分かるのだ。だけど、正社員もフリーターも、結局同じ人間で、そんな身分よりも自分のアイデンティティーの方が大事な訳で、身分で人を区別するのは簡単だけど、本質はそう簡単には分からないのだ。


ちなみに今オレが働いているレーベルはワールドミュージックを専門に扱うレーベルで、ワールドミュージック、というと一般的には極マニアックなジャンルな訳だから、当然マーケットはロックやポップスに比べれば断然狭い訳だ。オレもワールドミュージック業界で働く前までは、ワールドミュージックって果たしてお金になるんだろうか、という疑念が拭えないほどだった。それに、もう耳が痛くなるほどだが「CDが売れない時代」になってしまったので、オレが働いている会社は、何とか給料は貰えるけど、実際は火の車なのだ。だから、正社員になったけど、全然オカネは稼げないのである。赤い疑惑も当然稼げるタイプのバンドじゃないので、オレは貧乏なのである。正社員になる前に社会勉強のつもりでやった派遣社員の方が余程稼げた。今はバイトの時と大して変わらない給料なのだ。


彼女と別れて、実家に出戻りした訳であるが、母は既に亡くなっており、最近姉が実家を出ていったので、今はオヤジと2人で暮らしている。申し訳程度の生活費をオヤジに渡しているが、今の給料じゃこの実家がなきゃ何もできない。これじゃ嫁さんも寄って来ないだろうと思われるのであるが、いまだにバンドマンであり続けることに生き甲斐を求め、日々生きているのである。そうなのだ、音楽にはいつも貪欲でいたいものである。そういう風に音楽に寄りかかっていないとオレは生きておれないのである。では、また徒然なるままに、いずれ近い内に。