5/16-5/31 HIT CHART
五月後半にどんなものがよく売れたか、というお話です。
8位以下の3タイトルは売り切れてしまっているのですが、「廃盤」という意向を受けているにも関わらず、あつかましくも再納品のお願いをしています。CD-R音源は、本格的なマスタリングを経ないでリリースされるものが多いのですが、そのおかげで音圧や音のきらびやかさに頼らない、素朴な鳴りが楽しめたり、あるいは宅録の人間臭さがほろっとこぼれおちてきたり、とにかく正規音源には無い魅力があったりするんですよね。
新入荷作品でチャートインしたのは、2枚のアナログです。DRY AND HEAVYの再始動作については、恐れ多いのでレビューを差し控えさせていただき、かわりに大石始さんからの解説を転載しました。
要注目なのは、京都のミュータント・ダブ・トリオRATVILLEの有井くんが主宰するレーベル・PUBLIC RIDDIMよりリリースされたスプリットの10インチ。CROSSBREDのRIEさんと、元beirut5(!知っている人にはびっくりの名前でしょう!)のDUB MAGUS氏が、それぞれ異色のベース・ミュージックをぶちまけるこのアナログは、ダンスミュージックファンにも、あるいはオルタナティヴ/ノイズ文脈で聴いても、面白いです。関西圏外のかたもぜひ!
1.シャムキャッツ / BGM
http://www.sunrain-records.com/catalog-3226.html
シャムキャッツ、これまでライブ会場のみで販売していた2009年作のDVDが入荷。「なんでもないところで演奏したい」という衝動を引きずりながら場所を探し、ついに荒川の河川敷での演奏が実現するまでを追った脱力ドキュメンタリー。マジックアワーに奏でられるシャムキャッツは素敵としか言いようがない!!同年11月8日、乍東十四雄とのスプリット・ツアーで訪れた名古屋鶴舞K.Dハポンでのライブ映像も収録。監督、エリザベス宮地。
2.洞 / まぼろし
http://www.sunrain-records.com/catalog-3262.html
これレコード主宰・洞のファーストアルバム!!深いエコーの森からたち現れる「うた」。洋邦のあたらしい音楽の潮流を踏まえながら、日本語で「自分たちの周囲を歌う」ことを大事にしている彼らの姿勢がぼんやりと浮かび上がってきます。
先輩格のミュージシャンや友人たちと同様に、日々流れる和製エモ/ポストハードコア/インディへの愛情を抱き、また長野ネオンホールで育まれてきたフォークミュージックにもその根を下ろしている―幅広い音楽性とそれを等身大の自分たちへ還元する力をもったバンド「洞」の魅力がぐっと詰まった。11曲入り。これで850円!!
3.ファズピックス / hi-color Exhibition
http://www.sunrain-records.com/catalog-1806.html
ファズピックス・2009年のシングルが入荷!!伸びやかで優しさを含んだボーカルとドライヴするギターサウンドの絡み合いがが、ノイジーでありながらも徹底してファンタジック!!
たとえ4つ打ちの曲であっても、ダンスミュージックに寄せるのではなく、あくまで「ロック」のフォーマットの中で冒険をしようとする気持ちが音にも表れていて、とても清々しい気分。誰かが「ロックの荒野」と呼んだ、危険な街・北九州で純粋培養されたファズピックスの面目が大躍如する1枚です。
4.うつくしきひかり / S.T.
http://www.sunrain-records.com/catalog-3230.html
ザ・なつやすみバンドの中川理沙さん+片想いのMC.sirafu。なつやすみバンドでもこの二人のコンビは聴くことが出来ますが、デュオ編成で抽出された「うつくしきひかり」は、なつやすみバンドのポップネスとは違った、シンプルな輝きに満ちています。
イノセントな歌声の周囲を飛び交うスティールパンとピアノ。音色もリズムもやわらかく、きらきらと輝きながら流れるような、まさにジャケの写真がぴったりの印象!!何度でもリピートしたくなる3曲入りです。
5.RIE LAMBDOLL / DUB MAGUS FROM BEIRUT / SPLIT
http://www.sunrain-records.com/catalog-3255.html
CROSSBREDのRIE LAMBDOLL×ex.beirut5のフリーフォームユニットDUB MAGUS FROM BEIRUTによる珠玉の10inch split!!
RIE LAMBDOLLサイドは、いかにもエレクトロっぽいぶっといベース、マイブラのアノのギターをも彷彿とさせる揺らぎのシンセ/ノイズ、そして彼女自身のヴォイスサンプルが飛び交い、ダークに沈んでゆくと同時に、果てしない高揚も予感させるという双方向作用がアヤシイ"SMELL OF YOU"を収録。
DUB MAGUS FROM BEIRUT(今回が初音源!!)サイドは2曲。淡々とした3拍子の鼓動の上にこだまするエフェクトとシンセががまるで深い海の底のようなサウンドスケープ・チューン“MARIKA”で幽玄を表現したかと思えば、次に続くはデスヴォイスとメタルパーカッション、ノイズが交差するスラッシュ・ミニマル・ダブ"VENGEAMNCE IS MINE"!!極悪ビートダウンHC”she luv it”からFLUX(orhythmo,RED,REDUCTION,atmosphare)と、DJ CE$がゲストに加わった、背筋がぞくぞくするこのショートチューンの破壊力は、サンレインもでスマッシュヒットした、かの「BATH-TUB OFFENDERS + DJ DISCHARGE / RE,ABRAHAM CROSS(http://www.sunrain-records.com/catalog-1577.html)」 にも比すべき、強烈なハードコアの変種ダンスミュージックです!!ジャケット・ラベルデザインはまたもやQOTAROO!!間違いなし。ジャケットは初回プレス分のみとのことですので、お早めにどうぞ!!
6.シグナレス / NO SIGNAL
http://www.sunrain-records.com/catalog-3147.html
あらかじめ決められた恋人たちへ×ゆーきゃん⇒シグナレスのファーストアルバム。あら恋であって、あら恋ではない。ゆーきゃんであって、ゆーきゃんではない。足し算でも掛け算でもない、ただお互いに好きなことやれば、化学反応が起きるんじゃないかという楽観的な予想で始めたユニットの、6年目のデビュー作です。自分たちにとっても、懐かしいような新しいような、そんな音だと思います。ぜひ聴いてみてください。
7.DRY AND HEAVY / ONE SHOT ONE KILLhttp://www.sunrain-records.com/catalog-3261.html
「これは奇跡であり、紛れもない事件だ。
これを奇跡のリユニオンと言わずして、何と言おうか。かつて<DRY&HEAVY>の名の下にリズム・チームを組んで日本国外にもその名を轟かせていたものの、01年の別離から約9年間、まったくと言っていいほど別々の道を歩んでいた七尾"DRY"茂大(ドラム)と秋本"HEAVY"武士(ベース)の2人が再び再会したのである。これは奇跡であり、紛れもない事件だ。
スライ&ロビーがスライ・ダンバーとロビー・シェイクスピアという2人よるリズム隊の名称であるように、本来DRY&HEAVYとは七尾と秋本という2人のコンビ名であった。実際、ルーツ・レゲエ/ダブが持つ一種凶暴なまでの攻撃性やドープネスをストイックに追求し、その現代性を鮮やかに浮き彫りにしてきたDRY&HEAVYの根幹となっていたのが、七尾と秋本による強靭なビートだったことはあえてここで強調するまでもないだろう。
01年の秋本脱退は決して友好的なものではなかったはずだし、その後のREBEL FAMILIA〜THE HEAVYMANNERSにおける秋本の大活躍ぶりによって、七尾とのコンビ復活が二度と叶わないものになってしまったことはファンも覚悟していたに違いない。だが、10年11月22日、渋谷ASIAで行われたBLACK TERRORにおいて七尾と秋本のコンビが本格復活。KILLER-BONG(ヴォーカル&MPC)、Cutsigh a.k.a. KASAI(ギター)を迎えた編成によってかつてのDRY&HEAVYとも違う異次元のダブサウンドを叩き付けてオーディエンスに衝撃を与えた。
そうしたなか、極秘でレコーディングされていたマテリアルがBLACK SMOKERからついに登場する。中野HEAVY SICKで延々繰り返された七尾と秋本のセッションに、KILLER-BONGとCutsighが音を加えた(その名も)"DRY&HEAVY"、そしてインスト・ヴァージョンの"ONE SHOT ONE KILL"。録音機材にはKORG社のMTR<CR-4>を使用し、一発勝負のライヴ・レコーディング。まるで情念が渦巻いているかのような音の塊は、もはやレゲエ/ダブというサウンドスタイルすら飛び越えている。ここには剣士が睨み合っているかのような緊張感
があり、怒りや喜び、哀しみを含んだエモーションの爆発がある。再会を喜ぶような微笑ましいムードは皆無。七尾と秋本が作り上げた<新生DRY&HEAVY>のサウンドは、誰も想像することすらできなかった未来のダブ・ミュージックだったのである。この音源がBLACK SMOKERからリリースされる意義を含め、これほどまでに重要な意味を持つ作品はそうそうない。衝撃の全20分26秒を体感せよ。(大石始)」
8.よしむらひらく / Setagaya Wandering Education
http://www.sunrain-records.com/catalog-3029.html
岸田佳也(ドラム)とほぼ二人で製作されたというCD-R。メロディセンス、アレンジの練られ方ともに、すわ、若きポップ・マエストロの誕生か!?ともろ手を挙げて歓迎したいところですが、その「ポップ」に色濃く影を落とすいびつさが曲者。
内省的な歌詞もさることながらその「声」から滲んでくる弱さのようなものは(けしてテクニカルな意味ではなく)ペイヴメントやフレイミング・リップスのそれにも似ているように思えます。あるいは、オーソドックス(かつ多彩)なポップスのフォーマットをとった楽曲ですが、どれもほんのりと土の匂いがするのは彼の出身である「武蔵野フォーク」の遺伝子なのかもしれません。
いずれにせよ、シンガーソングライターとして自己表現を誠実に果たすことと、音楽家として純粋な音楽性を追求すること、そのどちらとも向きあいながら到達した、「よしむらひらく」というクリエイターにとって現時点での最高傑作であることに間違いはないでしょう(これで500円!!)。茶封筒で作られたジャケットから取りだし、歌詞カードを読みながら、あるいはホームページの特設コーナーに掲載されている解説や写真とあわせて聴いてみてください。ゲストキーボードにカメダタク(オワリカラ)が参加。
9.撃鉄 / Gekitetsu 1
http://www.sunrain-records.com/catalog-2950.html
ライブ会場での衝撃をお部屋でもぜひ!!超新星・撃鉄のCD-Rが入荷!!カキンカキンのノーウェーヴ・サウンドの上を、人間力を過剰に積載したボーカルが飛んでゆく。FUJI ROCK 2009、ROOKIE A GO GOのステージで、昇ってはいけないところ(アトラクション)までよじ登ろうとし、スタッフからめちゃくちゃ怒られた、というエピソードも「あー、なるほど」と思わせてくれる、どこを切ってもエナジーの高さが溢れだしてくる曲・演奏です。来るべき全国ツアーに向けて、このCD-Rで予習しておきましょう。
10.よしむらひらく / 春
http://www.sunrain-records.com/catalog-3263.html
よしむらひらく、ついに全国流通盤をリリース。まずは人気曲「春」をシングルカット!!
このひとの音楽については、これまでのレビューでもさんざん語ってきたように思いますので、この200円シングルでいまさらに何かを言うことはやめようと思いますが・・・
とにかく、この曲はタイトルも、歌詞も、メロディも、声も、秀逸です。多くの若者が(すくなくとも古いタイプの若者ならば)通過しなくてはならない儀礼のような空気を見事に凝縮した歌。