6/1-6/15 CHART

遅ればせながら、6月前半のチャートを。
トクマルシューゴ君主催の「トノフォン・フェス」前後に、王舟のCD-Rがどっと動きました。「賛成」は売り切れとなってしまったので、目下再オーダー中です。
鳥獣虫魚、これレコード、そしてレーベル単位ではありませんがシャムキャッツ、こういったレーベルやアーティストがつくる新しいコミュニティの空気に触れるたびに、「ニュースクール」という単語が頭をよぎります。ぼくも年をとったんですかね。
今回のチャートではWATER WATER CAMEL赤い疑惑、DJ CASINにシラオカといった、ずっと独立独歩で活動を続けているバンドが地域や世代を超えて確かな支持を得ているのも、色々な意味で励みになります。

地方都市から発信する、ということについては、このところずっと考え続けているぼくのテーマでもあるので、稿を改めてどこかでお話できたらと思っています。


1.王舟 / Thailand
http://www.sunrain-records.com/catalog-2947.html
冒頭のノイズ混じりのイントロから、何事かが起こるに違いないという予感を抱きながら聴き始めると、その先にはKIP HANRAHAN、Jim O'Rourke、青柳拓次といった音楽家たちにも連なる、アメリカーナ的な、乾いた祝祭の空気が広がっている。
mmmのフルート、フジワラサトシのギター、oono yuukiのトランペットなど、ホームグラウンドである八丁堀・七針で出会った音楽仲間たちが"王舟"というメロディを増幅させ、インスト曲においても、もちろんボーカル曲においても、瑞々しさと大きなスケールを同時にあたえながら「うた」を鳴り響かせています。これはひとりのSSWの作品であると共に、素晴らしい人選で完璧なまでに編み上げられたプロジェクト・ワークであるとも言えるでしょう。
4曲入り525円のCDR作品ですが、何度リピートして聴いても一向に飽きが来ません、と同時に早くも次回作が待ち遠しくて仕方なくなっています。トクマルシューゴ君が頭角を現し出したときのようなワクワク感。「王舟」ぜひチェックしてください!


2.シャムキャッツ / BGM
http://www.sunrain-records.com/catalog-3226.html
「なんでもないところで演奏したい」という衝動を引きずりながら場所を探し、ついに荒川の河川敷での演奏が実現するまでを追った脱力ドキュメンタリー。マジックアワーに奏でられるシャムキャッツは素敵としか言いようがない!!同年11月8日、乍東十四雄とのスプリット・ツアーで訪れた名古屋鶴舞K.Dハポンでのライブ映像も収録。監督、エリザベス宮地。


3.WATER WATER CAMEL / 分室
http://www.sunrain-records.com/catalog-3132.html
WATER WATER CAMELの限定流通盤。これを「良くない」ということはどう考えても困難なように思えます。山梨に居を移し、生活と音楽を結ぶ小さな試みを重ねる共同体による2010年冬のレポート。うたいだすとそこに静けさが積もってゆくような声、そしてキャンパスに下地を塗り、歌に影を添えるかのようにそっと置かれたギターの表現力、飾り気なく添えられるベースの滋味、ゲストメンバーの人選も申し分なく、どこを切っても静かな感動が溢れだしてきます。デジパックトレイの底に記されたメンバーからのメッセージも素晴らしく(あえてここでは書きません)、ぜひ手に取ってほしい一枚です!!


4.洞 / まぼろし
http://www.sunrain-records.com/catalog-3262.html
これレコード主宰・洞のファーストアルバム。深いエコーの森からたち現れる「うた」。洋邦のあたらしい音楽の潮流を踏まえながら、日本語で「自分たちの周囲を歌う」ことを大事にしている彼らの姿勢がぼんやりと浮かび上がってきます。先輩格のミュージシャンや友人たちと同様に、日々流れる和製エモ/ポストハードコア/インディへの愛情を抱き、また長野ネオンホールで育まれてきたフォークミュージックにもその根を下ろしている―幅広い音楽性とそれを等身大の自分たちへ還元する力をもったバンド「洞」の魅力がぐっと詰まった。11曲入り。これで850円!!


5.赤い疑惑 / オレ達は日本で生きてる
http://www.sunrain-records.com/catalog-3274.html
実生活に基づいたであろう数々の物語が、告白手記にもにたリリックで綴られてゆく。むき出しのボーカルはどこかコミカルでありながら哀愁に満ち、諦めや自嘲をはらみながらも、生きているその実感をダイレクトに伝えてくれる。「与作」のオマージュから始まるこのアルバム、持ち味のリアルなエモーションはより濃度を増し、さらに音楽性は雑多になり(民謡/クンビア/ヒップホップ/ポストハードコアetc..)、なお全く揺らぐことなく「赤い疑惑」。世界や社会に対する反発や憤りを覚えながらも、やむを得ず様々なしがらみや不条理を受け止め飲み込んで生きざるを得ない、けれどただ打ち負かされるのではなく、状況の中で立ち上がり、立ち向かってゆく―そんなすべての弱者のための、真のレベル・ミュージックがここに。


6.HARA KAZUTOSHI / 楽しい暮らし
http://www.sunrain-records.com/catalog-3233.html
王舟ファンなら、彼による「楽しい暮らし」のカヴァーを耳にされたことのあるかたは多いのではないでしょうか。オリジナル・バージョンの歌い手によるデビュー盤が、おなじく鳥獣虫魚よりリリースです!!聞くところによると、Gellersのニュー・シングル『Guatemala』の制作にも参加し作曲を手掛けるも、やはり自身の活動に専念するために脱退したのだとか。
前情報だけでソングライティングセンスには疑いの余地がないことは分かっていましたが、このアルバムにおいては「曲の良さ」がその朴訥とした「声」の優しさ、ささやかなものを掘り当ててゆく「ことば」の力と相まって、掛け替えのない魅力を生んでいます。
都市で生まれた全9曲、フォークソングと呼ぶには泥臭さが抜けていますが、それゆえにこそ、「いま」生活を紡いでゆくその傍にあってほしい「ちょうどいい感じ」の音楽だといえるでしょう。


7.ちゅうぶらんこ / MOT OTO
http://www.sunrain-records.com/catalog-3275.html
1990年に発売した1stCD「ハローフーラ」は現在廃盤、DVD「26世紀の夢売人」も残部僅少となっているなか、レーベルヤバンがなんともふとっぱらな作品を届けてくれました。2作品をカップリング+特典に初期スタジオ音源(1at&2nd 収録曲)に未発表の2曲「ファンファン」(7分50秒)と「瑠璃色キッス」(11分32秒)を加えた貴重なCD-R「TOT OTO」(とっとぉ〜と)がついて3150円(税込み)。
以前、向井秀徳氏が「ちゅうぶらんことライカスパイダーは福岡のミッシングリンクだ」というお話をしてくださいました。いわゆる伝統の「めんたいロック」が、ナンバーガールモーサムトーンベンダーそしてパニックスマイルに至るための、革命的に重要かつ盲点であった存在が残した貴重な記録をぐっと凝縮した3枚組です!!必携。


8.DJ CASIN / 大?日?本?人? vol.2
http://www.sunrain-records.com/catalog-3186.html
DJ CASINによる「日本人縛り」のMIX第二弾。日本人の音源のみで繋いだというこの作品、ですが当然のことながらフツーの「和モノ」とは全く異なるフレイバー。伝家の宝刀とも言うべきブレンドから、スクラッチ、ロングmixなどなど、確かなスキルをいい塩梅に散りばめ、ラップもハウスもJ-POPさえもクロスオーヴァーさせて紡いでゆく、なんともマジカルな作品に仕上がっています。カッコイイMIXはたくさんありますが、加えて、聴いていて楽しくなるこの「大?日?本?人? vol.2」、MIX CD入門者にも100%オススメします!


9.撃鉄 / Gekitetsu 1
http://www.sunrain-records.com/catalog-2950.html
カキンカキンのノーウェーヴ・サウンドの上を、人間力を過剰に積載したボーカルが飛んでゆく。FUJI ROCK 2009、ROOKIE A GO GOのステージで、昇ってはいけないところ(アトラクション)までよじ登ろうとし、スタッフからめちゃくちゃ怒られた、というエピソードも「あー、なるほど」と思わせてくれる、どこを切ってもエナジーの高さが溢れだしてくる曲・演奏です。
東京では精力的・爆発的な数のライブをこなしているものの、地方遠征はまだそれほどの経験がない彼等。来るべき全国ツアーに向けて、このCD-Rで予習しておきましょう


10.シラオカ / 部屋
http://www.sunrain-records.com/catalog-3225.html
名古屋インディ/アンダーグラウンドの静かなる鍵、シラオカの初公式音源。これまでにもオーロラ、Gofish、ゑでぃまぁこん等を手掛ける稲田誠氏のたっての推薦でcompare notesからのリリースが決まったという彼ら、その黄金リレーの素晴らしさを実感させられる充実の一枚が届きました。
いとおしむような抑揚で奏でられる「音楽」、練られたアレンジとハーモニーは、泉の涌くように耳の内側から感動を呼び覚ましてくれます。teasi,
Gofishといった名古屋の先輩はもちろんのこと、これまで彼らが来日をサポートしてきたL'altraやDakota Suiteといったスロウコアの巨星にも連なる、静かで穏やかで、そして強い波がここに。おすすめめです。





そういえば、先日FUN☆ANA(ちゅうぶらんこ榎木さん、PANICSMILE吉田さん所属のバンド)のライブを観にいったのですが、なんとちゅうぶらんこ時代の名曲「パトリシア」をセルフカヴァーされていました。全然アレンジが違ったので最初は気付きませんでしたが…
YOUTUBEには「パトリシア」は上がっていなかったので、別の映像を。CD+DVD+CD-Rの「MOT OTO」は本当にオススメです。しびれます。