HIT CHART 8/1-8/15

 毎年お盆中は、さすがに皆さん帰省等でネット・ショップどころではないのだろうなあと、PCの前で頬杖をついていることが多いのですが、今年はがーんと売り上げが急落することもなく(もともと繁盛からは程遠い店ですが…)連日コンスタントにご注文をいただきました。
 運送会社のほうで発送のトラブルが数件あり、お届けが遅くなってしまった方もいらっしゃいます。この場を借りてあらためてお詫びを。ごめんなさい。

 さて今回のチャート。夏の暑さをしのぐ涼しげなうたものを軸に、世間とはほとんど無関係な品揃えが続きます。
#1.『鳴海徹朗 / 美しい叫び』は、もうすぐ在庫終了です。100枚限定のシリアルナンバーも終わりに近づいてきました。#4.『YOK / Days with hearts』は素敵なPVも発見。#6.『LOW-PASS / NOW』は、最近のサンレインでは異色のインスト・スリーピースによるDVD、#7.『小池喬 / お風呂の栓』はじわじわ注目を集めつつある長野のロウファイ・レーベル「これレコード」からの最新作。どうぞチェックしてくださいー。


1.鳴海徹朗 / 美しい叫び
http://www.sunrain-records.com/catalog-3298.html

谷川健一さんから「弘前にいい歌うたいがおんねんけど…」と紹介していただいたのが、この鳴海徹朗氏。すこし翳りのある透き通った声、独白と祈りのあわいを行き来する詩、控えめながらも濃密と言っていいほど丁寧に紡がれるギター、シンプルな「弾き語り」というフォーマットの滋味を余すことなく詰め込んだ6曲入りCD-Rです。
その完成度に「どうしてこんなひとが、"知る人ぞ知る"ようにひっそりと活動を続けているのだろう?」と思う反面、おそらくこの町の風土や気候、ひととのかかわりの中で必然的に根を張り育ってきた「うた」だからこそ、これほどの説得力を持ちえているのだろうと、分かる気もします(かく言うぼくも弘前という町を訪れたことは未だないのですが…)。
いずれにせよ、胸に響く「歌」を求める耳には届いて欲しい。WATER WATER CAMEL〜Gohfishそして長谷川健一あたりが好きなひとにはマストだと思います!!100枚限定のハンドメイド(しかもすごく丁寧)作品。お早めにどうぞー。


2.森ゆに / 夜をくぐる
http://www.sunrain-records.com/catalog-3300.html

2009年の「夏は来る」以来、2年ぶりのセカンドアルバムは、全曲クラシック・ピアノ一台での弾き語り。エンジニアにWATER WATER CAMELの田辺玄を迎え、山梨県でレコーディングされた8曲は、静けさも、レンジの広い豊かな響きも、余すことなくコンパクトディスクの中にすーっとおさまった、そんな印象を受けます。曲が始まるその瞬間の呼吸とピアノのタッチが、あまりにもさりげなく、それでいて力強く聴く者の耳を惹きつける。心地よさと想像力を掻き立てながら流れてゆく曲を聴くにつけ、楽器も、うたも、そしてエンジニアも、すべてがその「役割」を果たしているのだと、しみじみとした感動を覚えずにはいられません。
ちなみに、1曲目は金延幸子さんのカヴァー。当然のことながら素晴らしいです。


3.Alfred Beach Sandal / One Day Calypso
http://www.sunrain-records.com/catalog-3312.html

昨年リリースの、鳥獣虫魚からのCDRがいまだロングセラーを続けるなかでの正規盤。トクマルシューゴくんが2010年のベストに挙げるほどの軽妙な作曲術は一樂誉志幸(FRATENN)やMC.sirafuといったゲスト陣によってさらにカラフルに彩られ、歌の存在感もぐっと増しています。5曲目「Finally, Summer has come」は自らのテーマとも呼んで差支えないでしょう!甘いメロディがぐっと胸を突く名曲。2011年の夏、必携盤となることは間違いなし、さらにその先何年も大事にしておきたい、魔法の作品です。


4.YOK / Days with hearts
http://www.sunrain-records.com/catalog-3341.html

名古屋在住の女性SSW・YOKの初流通音源。録音からミキシングまで、すべて自分で手掛けたという、パーソナルでハンドメイドな作品。海外のインディうたものとリンクする手触りは、王州、mmm、muffinといった同時代のSSWとも共鳴するところがありますが、この人の魅力は、さらにやはり「7586」界隈といいますか、名古屋独特の「日常性」と「ゆらぎ」にもあると思われます。
アコースティックギターの憂いを帯びたコード進行の上に、重ねられた声がドレープ状に広がってゆくときの心地よさ、そしてふと顔をのぞかせる不完全な風通しの良さ、ひょっとしてこれは何度も聴きたくなる名盤ではないでしょうか。埋火、Place Called Space、predawnのファンにも一度聴いてみてほしいです!


5.ゆーきゃん / To The Sea
http://www.sunrain-records.com/catalog-3304.html

2010年〜2011年にかけて、ポータブルレコーダーで何気なく拾われた音の記録。ドアが開閉する音、バーで氷が砕かれる音、ハーシュノイズ、些細な間違い、それらさえも「アリだな」と思える瞬間の詰まったテイクをコンパイルしました。マスタリングはWATER WATER CAMEL田辺玄。スピーカーから流れてくる音の一切があたたかいです。


6.LOW-PASS / NOW
http://www.sunrain-records.com/catalog-3347.html

京都のインスト・スリーピースLOW-PASSによる、2010年のライブをコンパイルしたDVDが入荷。6/28 滋賀U☆STONE、6/21 京都whoopee's、6/26京都OOH-LALA、11/21渋谷O-nestの計4か所での公演からベストテイクを厳選。ポストロック〜マスロックの硬質なアンサンブル、ミクスチャー的なアプローチをとりいれたハードなグル―ヴ、そしてフロアの熱狂にしっかりまなざしを落とした、ダンスミュージックノ享楽的なノリまで、ジャンルを横断して様々なバンドと交流のある彼ららしさが実によく出ています。曲に被りがある分、逆に、会場ごとに微妙に違うバンドのテンションや箱鳴りを聴くことができて、それもまた楽しい。これ、いろんな人に観てほしいなあ。


7.小池喬 / お風呂の栓
http://www.sunrain-records.com/catalog-3354.html

名古屋のインディうたものバンド・シラオカより、ボーカル小池くんのソロ作品がこれレコードより。シラオカは、もともと音数の多くない、空気をたっぷりと含んだ「うた」を響かせることを得意としているバンドですが、そのソングライターによるソロ作品もそぎ落とされたアンサンブルが素晴らしい。名古屋の大先輩Gofishと、これレコードの中核をなすバンド・洞の中間にあるような手触り、かつ、歌詞にもアレンジにも時折顔をのぞかせるユーモラスな表情が「小池喬」のオリジナルな人間性を滲ませていて、何度でも聴きたくなる、見事な小品です。
味わい深いジャケットイラストは同じくシラオカのメンバー、石谷くんによるもの。


8.うつくしきひかり / S.T.
http://www.sunrain-records.com/catalog-3230.html

ザ・なつやすみバンドの中川理沙さん+片想いのMC.sirafu。なつやすみバンドでもこの二人のコンビは聴くことが出来ますが、デュオ編成で抽出された「うつくしきひかり」は、なつやすみバンドのポップネスとは違った、シンプルな輝きに満ちています。イノセントな歌声の周囲を飛び交うスティールパンとピアノ。音色もリズムもやわらかく、きらきらと輝きながら流れるような、まさにジャケの写真がぴったりの印象!!何度でもリピートしたくなる3曲入りです。


9.ちゅうぶらんこ / MOT OTO
http://www.sunrain-records.com/catalog-3275.html

1990年に発売した1stCD「ハローフーラ」は現在廃盤、DVD「26世紀の夢売人」も残部僅少となっているなか、レーベルヤバンがなんともふとっぱらなリリースを。2作品をカップリング+特典に初期スタジオ音源(1at&2nd 収録曲)に未発表の2曲「ファンファン」(7分50秒)と「瑠璃色キッス」(11分32秒)を加えた貴重なCD-R「TOT OTO」(とっとぉ〜と)がついて3150円(税込み)。
以前、向井秀徳氏が「ちゅうぶらんことライカスパイダーは福岡のミッシングリンクだ」というお話をしてくださいました。いわゆる伝統の「めんたいロック」が、ナンバーガールモーサムトーンベンダーそしてパニックスマイルに至るための、革命的に重要かつ盲点であった存在が残した貴重な記録をぐっと凝縮した3枚組です!!必携。


10.WATER WATER CAMEL / 分室
http://www.sunrain-records.com/catalog-3132.html

これを「良くない」ということはどう考えても困難なように思えます。山梨に居を移し、生活と音楽を結ぶ小さな試みを重ねる共同体による2010年冬のレポート。うたいだすとそこに静けさが積もってゆくような声、そしてキャンパスに下地を塗り、歌に影を添えるかのようにそっと置かれたギターの表現力、飾り気なく添えられるベースの滋味、ゲストメンバーの人選も申し分なく、どこを切っても静かな感動が溢れだしてきます。デジパックトレイの底に記されたメンバーからのメッセージも素晴らしく(あえてここでは書きません)、ぜひ手に取ってほしい一枚です!!



ちなみに、次点は並んで、
よしむらひらく / はじめなかおわり
http://www.sunrain-records.com/catalog-3313.html

ストレートな「ポップミュージック」の中に、ときにはみっともないくらいの焦燥や倦怠を詰め込んで、なおかつそれが「自意識に中毒」することもなく、あくまで美しい「音楽」に昇華されてゆくのは、やっぱりそれが「ポップミュージック」としての強度を充分に持っているから…などと理屈っぽいことを思ってしまうのですが、とにかく曲も歌もアレンジも歌詞も、2010年の東京に生きる若者の感受性を見事に反映した、「会心」としか言いようのない仕上がり。いびつさと普遍性が、音楽という土俵の上でバランスを取って立っている様は、90年代の終わりのくるりが持っていたあの空気と似ているなあ、と、ふと思いました。とにかく、ぼくは、よしむらひらくが好きです。


ビデオテープミュージック / SUMMER OF DEATH
http://www.sunrain-records.com/catalog-2914.html

VSH(ビデオテープ)によるトラックと映像×ピアニカという不思議な構成でライヴを繰り広げる、間部功夫のソロユニット「ビデオテープミュージック」のセカンドアルバム。
モジュレーションのかかったボイスによるラップ、お得意のサウンドコラージュを巧みに使ったソウルミュージック、そしてゲスト参加の盟友MC sirafu(片想い)が見事な仕事をしているトロピカルチューン、ゆっくり目のBPMで紡がれる、11編の夏の物語。気だるさ、洒脱さ、乾いたユーモア、どれをとっても2010年の東京郊外から流れてくるにふさわしい、これは「海へ行くつもりじゃなかった」のその後でしょうか。