ギューンカセット・スタジオ探訪記

先日、心斎橋のスタジオ・パズルの屋根裏にある、ギューンカセットのミックス・ルームにお邪魔してきました。


ギューンの初期の名作は、この8トラックのオープンリールから生まれたのです。


こちらは現役の16トラック。と言っても十数年前に導入されたものらしいですが・・


どこに言っても必ずといっていいほどPLO TOOLSと出会うようになったレコーディングスタジオの世界において、macどころかモニターすらなく、当たり前のようにオープン・リールだけで音源が録られつづけている場所がある、ということに驚愕しました。


でも、アナログ録音の全部がいい、ってわけでもないねん。ここでアナログで録って、ミックスして、いいと思っても、CDにするとき(デジタルに変換)に音が変わってまうねん。それで失敗したとやつも結構あんねんで。埋火の最初のデモとか、アナログやったらもっとよくなるはずやってんけどなあ。


これは、ギューンカセット主宰、そしてこの部屋でのミックスをずっと手がけてこられた須原さんのことばです。


メンボーズの中村さんが新しく始めようとされていたバンドの音源や録りっぱなし音源や、怖のお二人の別バンド(PLAYMATESの山本聖さんが録音を担当)のマスターなど、”秘蔵”としか言いようのないテープを聴かせていただきました。時間はなかったので聴きませんでしたが、KING BROTHERSのファースト・デモもここで作られたれたそうです。いっぱい聴いたなあと思うと、感慨深いものがありました。とくに怖のお二人の別バンド「スナプキンズ」の音源は、カセットMTRでわざと”劣悪な音”に仕上げたものを、このスタジオでマスタリングしたのだそうで、同じチャンネルに入れたベースとドラムが潰れ切った、なんじゃこれ!?みたいな音だったのですが、しかし猛烈にかっこよかったのです。


たまたま翌日、こんどは山本精一さんとお話しする機会があったのですが、想い出波止場の初期音源などは文字通り”アナログでしかできない”冒険を、たくさん聞かせていただきました。


データ転送やコピーの利便性や音質劣化の問題など、いろいろな理由があって世界の主流はデジタル録音になっているのだと思いますが(もちろん再生機器も圧倒的にデジタルのシェアのほうが大きいですから)、こんなふうに頑なに-しかもただ自分の感覚的な”好み”に基づいて-「音」を愛し続ける場所がある、ということをとてもとてもうれしく思ったのでした。


ちなみに、2008年リリースのJenny on the planetのセカンドアルバム"for"は、このミックスームで生まれた名作です。


ライブ映像ですが、アルバムの冒頭を飾る"summer rain"。


作品はこちらです。彼らの音楽が内包する「あたたかみ」を、ほんとうに見事にパッケージングしていると思います。
http://www.sunrain-records.com/catalog-1354.html


皆さんも、スタジオパズルで須原さんとお会いすることがあれば、ぜひ頼み込んで屋根裏を見せてもらってみてはいかがでしょうか。面白いですよ!