7/1-7/16 CHART

こちらも遅くなりましたが、7月前半のチャートを。

1.森ゆに / 夜をくぐる
http://www.sunrain-records.com/catalog-3300.html
2009年の「夏は来る」以来、2年ぶりのセカンドアルバムは、全曲クラシック・ピアノ一台での弾き語り。エンジニアにWATER WATER CAMELの田辺玄を迎え、山梨県でレコーディングされた8曲は、静けさも、レンジの広い豊かな響きも、余すことなくコンパクトディスクの中にすーっとおさまった、そんな印象を受けます。曲が始まるその瞬間の呼吸とピアノのタッチが、あまりにもさりげなく、それでいて力強く聴く者の耳を惹きつける。心地よさと想像力を掻き立てながら流れてゆく曲を聴くにつけ、楽器も、うたも、そしてエンジニアも、すべてがその「役割」を果たしているのだと、しみじみとした感動を覚えずにはいられません。ちなみに、1曲目は金延幸子さんのカヴァー。当然のことながら素晴らしいです。


2.Alfred Beach Sandal / One Day Calypso
http://www.sunrain-records.com/catalog-3312.html
昨年リリースの、鳥獣虫魚からのCDRがいまだロングセラーを続けるなかでの正規盤。トクマルシューゴくんが2010年のベストに挙げるほどの軽妙な作曲術は一樂誉志幸(FRATENN)やMC.sirafuといったゲスト陣によってさらにカラフルに彩られ、歌の存在感もぐっと増しています。5曲目「Finally, Summer has come」は自らのテーマとも呼んで差支えないでしょう!甘いメロディがぐっと胸を突く名曲。2011年の夏、必携盤となることは間違いなし、さらにその先何年も大事にしておきたい、魔法の作品です。


3.ゆーきゃん / To The Sea
http://www.sunrain-records.com/catalog-3304.html
2010年〜2011年にかけて、ポータブルレコーダーで何気なく拾われた音の記録。ドアが開閉する音、バーで氷が砕かれる音、ハーシュノイズ、些細な間違い、それらさえも「アリだな」と思える瞬間の詰まったテイクをコンパイルしました。マスタリングはWATER WATER CAMEL田辺玄。スピーカーから流れてくる音の一切があたたかいです。


4.よしむらひらく / はじめなかおわり
http://www.sunrain-records.com/catalog-3313.html
ストレートな「ポップミュージック」の中に、ときにはみっともないくらいの焦燥や倦怠を詰め込んで、なおかつそれが「自意識に中毒」することもなく、あくまで美しい「音楽」に昇華されてゆくのは、やっぱりそれが「ポップミュージック」としての強度を充分に持っているから…などと理屈っぽいことを思ってしまうのですが、とにかく曲も歌もアレンジも歌詞も、2010年の東京に生きる若者の感受性を見事に反映した、「会心」としか言いようのない仕上がり。いびつさと普遍性が、音楽という土俵の上でバランスを取って立っている様は、90年代の終わりのくるりが持っていたあの空気と似ているなあ、と、ふと思いました。とにかく、ぼくは、よしむらひらくが好きです。


5.EVISBEATS / Welcome to the Super Culture
http://www.sunrain-records.com/catalog-3092.html
EVISBEATSがNY在住のHIP HOPアクトCHANNEL EARTHと合作!!笠置シヅコ(!)なども織り交ぜた縦横無尽なトラックメイクとCHANNEL EARTHによるいかついラップが意外なほどよく合います。名曲「般若心経RAP」の英語バージョンや、日本語と英語が飛び交うラップの掛け合いなど、アイディアと遊び心に満ちた、それにいて爆裂にカッコイイ一枚です!!


6.WATER WATER CAMEL / 分室
http://www.sunrain-records.com/catalog-3132.html
WATER WATER CAMELの限定流通盤が入荷。これを「良くない」ということはどう考えても困難なように思えます。山梨に居を移し、生活と音楽を結ぶ小さな試みを重ねる共同体による2010年冬のレポート。うたいだすとそこに静けさが積もってゆくような声、そしてキャンパスに下地を塗り、歌に影を添えるかのようにそっと置かれたギターの表現力、飾り気なく添えられるベースの滋味、ゲストメンバーの人選も申し分なく、どこを切っても静かな感動が溢れだしてきます。デジパックトレイの底に記されたメンバーからのメッセージも素晴らしく(あえてここでは書きません)、ぜひ手に取ってほしい一枚です!!


7.赤い疑惑 / オレ達は日本で生きてる
http://www.sunrain-records.com/catalog-3274.html
実生活に基づいたであろう数々の物語が、告白手記にもにたリリックで綴られてゆく。むき出しのボーカルはどこかコミカルでありながら哀愁に満ち、諦めや自嘲をはらみながらも、生きているその実感をダイレクトに伝えてくれる。「与作」のオマージュから始まるこのアルバム、持ち味のリアルなエモーションはより濃度を増し、さらに音楽性は雑多になり(民謡/クンビア/ヒップホップ/ポストハードコアetc..)、なお全く揺らぐことなく「赤い疑惑」。世界や社会に対する反発や憤りを覚えながらも、やむを得ず様々なしがらみや不条理を受け止め飲み込んで生きざるを得ない、けれどただ打ち負かされるのではなく、状況の中で立ち上がり、立ち向かってゆく―そんなすべての弱者のための、真のレベル・ミュージックがここに。


8.BING / HOMENAJE A LA MUSICA COLOMBIANA
http://www.sunrain-records.com/catalog-2849.html
BING、待望の新作、コロンビアで掘ってきたLP、SP、カセット、CDR、そして自らが録音したフィールドRec.などを再構築して出来上がった純正コロンビアMIX!!DOMMUNEなどでこの人のプレイを目撃した人も多いと思いますが、即興性も自由度も非常に高く、それでいて鉄板のドープネスが本当にヤバイ。「アシッド文化人類学」という呼称はまさに言いえて妙です!!


9.mmm / mmm at 西ヶ方小学校
http://www.sunrain-records.com/catalog-3322.html
2011年の1月24日、高知県四万十市立西ヶ方小学校を訪れたmmmさんと、生徒たちによる「うた」を通じた交流の記録。先生が生徒に挨拶させるところから始まり、「東京から来ました」というmmmのことばに涌く子供たち、うたの緊張がだんだんほぐれてゆく時間の流れ、子供たちとmmmとの合同演奏(説明と練習も収録。これが微笑ましくて感動!)、そして最後のお礼まで、うたを通じた「邂逅」ということばがぴったりな45分間です。はじめに先生が生徒に呼びかける「音楽をたのしみましょうね」ということばに、あらためて何度も頷くことまちがいなし。おすすめ!!


10.SARUDOG FROM MU-STARS / SF!SERIES! vol.2
http://www.sunrain-records.com/catalog-3325.html
これまでも「45回転盤の7”EPを45枚使って45分のミックスを作る」など、コンセプチュアルなのか冗談なのか分からないMIXを超ハイクオリティで仕上げている職人・SARUDOG氏。かのECDをもうならせる和モノコレクター、でもある彼のオンリー・ジャパニーズMIX、大好評の前作をうけてまさかの第二弾が発売です!!'60〜'70年代のニッポンのレアグルーヴ/ファンクetc..が持つ、いなせでファニーな空気ががっつり盛り込んであります。肩ひじ張らず、ひとなっつこいのに、洒落ていてばっちり踊れる。今回もすばらしい!

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CD-Rの売り上げが大半を占めるサンレインですが、珍しくプレス盤が多数ランクインしています。森ゆに、Alfred Beach Sandal、よしむらひらくのお三方は、店舗限定特典を付けていただきました。こういうのはお店にとってもお客さんにとっても、嬉しいです。

EVISBEATSの作品は、ウチにある全タイトルが密かにロングヒットを続けている隠れたベストセラー。今回ランクインした「Welcome to the Super Culture」は、昨年入荷、洒脱なユーモアに溢れたトラックと図太いラップが見事なマッチをみせています。

前作が人気だったSARUDOG氏の和モノMIX「SF! SERIES!vol.2」は、もちろん今回も大推薦。試聴していただけないのが残念ですが、ECD、永田一直、やけのはら、タカラダミチノブといった人たちのMIXが好きなかたにはぜひともお勧めしたいです。


ちなみに、次点はこれ⇒「うつくしきひかり / S.T.」http://www.sunrain-records.com/catalog-3230.html
ザ・なつやすみバンドの中川さんと「Alfred Beach Sandal / One Day Calypso」にも参加している、MC sirafu氏による、ピアノ+スチールパン+うたのシンプルで美しい作品です。