チャート更新 2011年12月

 すっかり遅くなってしまいましたが、あけましておめでとうございます。
 個人的にスケジュールを詰め込み過ぎて、新年になんてならないんじゃないだろうかとさえ思わされる年の瀬でした。


 でも、冗談ばかりではなく、ほんとうに2012年が来てよかったです。もちろん、去年に起こったことたちには、まだまだ解決から程遠かったり、気を許してはいけなかったりするものばかりが宇山のように積まれているのですが…
 とにかく、世界が終るかも、と思ったあの3月から9カ月を経て、まだ生きて、音楽を奏でたり聴いたりしていられることは、おおげさではなく奇跡のようにも感じられます。みなさん、今年はきっとよい年に、こんどこそ「希望」が空疎なお題目ではなくて、ほんとうに未来に向かってゆくような一年に、しましょう。


 さて、まずは先月のチャートをまとめてみます。
シンガーソングライターものが非常に強い月でした。麓健一土井玄臣の二人の新作は、初入荷から1週間ほどで完売。土井さんのCDRはご本人による手作りのため、再入荷までもう少し時間がかかりそうです。どうぞお待ちください。
 
 嬉しかったのは、bedの7インチがじわじわと出ていること。すこしシーンがずれたサンレインのようなお店で、しかも違った文脈の作品と一緒に彼らの作品が買われているのを見るたび、画面の前で小躍りしています。

 次点以下も、新譜・旧譜織り交ぜていろんな人がいろんなものを探し出してくれた12月。管理人はツアーの合間を縫って、発送の鬼みたいになっていましたが、その甲斐あった月でした!


1.麓健一 / コロニー
http://www.sunrain-records.com/catalog-3527.html
麓健一、待望のセカンドアルバム。スッパマイクロパンチョップ、T.T.端子、ホソマリとのバンド編成で、中村宗一郎氏をエンジニアに迎えた、初のスタジオレコーディング・テイクが6曲。書き下ろしの自宅録音が5曲。mmm、oono yuuki、高田正子(にせんねんもんだい)、フジワラサトシといった親しい仲間たちの協力も得て作られたセカンドアルバムは、グル―ヴやアンサンブルの奥行きが増した分だけ、かえって前作よりさらなる混沌と諧謔(自虐すれすれのユーモア)、そしてむきだしの肉体と感受性によるストラグルの軌跡が浮かび上がる、いびつ、かつ愚直な大作だといえます。
ほんとうのことを言うと、できるだけ聴き流さないで、しずかに受け止められる時間にだけ聴きたい。人のたくさんいる場所ではなくて、ひとりの時間に、ひとりの耳で、聴きたい。そんな逸品です。


2.ゆーきゃん / ロータリー・ソングズ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3453.html
ゆーきゃん、ソロアルバムとしては実に7年ぶりの3枚目。高橋健太郎さんの家が取り壊しになる数日前に録音され、ひっそりと眠っていた音源に、田代貴之(bass)、エマーソン北村(key)、見汐麻衣(cho)、そして高橋さんご本人(guitar,etc...)と、ゲストプレイヤーの見事な力添えを得て出来上がった5曲に、ホーム・京都UrBANGUILDでのライブを収録した全6曲入り。アートワークは京都在住の画家・足田メロウ氏。かねてから親交のあるトラックメーカー・FRAGMENT主宰の術ノ穴よりりリースです。


3.よしむらひらく / 2011
SSWよしむらひらくの新作CDRが入荷しました。象徴的なタイトル、震災後に生まれた5編の独白。ドラムに岸田佳也、ピアノとコーラスにアラカキヒロコを迎えた他はすべて一人で手掛けた、とてもパーソナルでストイックなCDR作品。定評あるソングライティングのセンスも今回はとくにエモーショナル、無駄のないアレンジも素晴らしく、でも最後はやっぱりこの「声」の力だな、と。


4.土井玄臣 / それでも春を待っている
http://www.sunrain-records.com/catalog-3522.html
大阪在住のSSWによる新作が、これレコードからリリース。アコースティックギター、ピアノ、そして柔らかな電子音たちによる白昼夢にも似た皮膜につつまれたサウンド。紡がれる歌詞の淡い情感をそのまま声に変える、リリカルな歌。この7曲入りのCDRのささやかなたたずまいに隠された闇と光の奥行きは、何度も聴き返しても計り知れないものがあります。
同じこれレコードの洞やbavaroisはもちろん、麓健一、oono yuukiら東京のSSWたちとも呼応する感受性。こういう作品と出会えるのが嬉しいです!

*現在入荷待ちです!アーティスト自身による手作り作品ですので、どうぞもうしばらくお待ちください。


5.白波多カミン / ランドセルカバーのゆくえ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3515.html
京都在住、職業は巫女という異色のSSWによるデビュー作がギューンカセットから。マイナーコードを基調にしたポップなメロディと、オーソドックスなアレンジ(グランジ以降のメロディアスな、それ)は、90年〜2000年代前半の海外SSWものを彷彿とさせる(そういえば、ジャケットもあの頃のインディ・レーベル風味です)のですが、その上を突き刺さるように飛んでくる日本語の歌詞は、ひとりの女性が内面に踏み込んで、美しい部分も醜い部分もぜんぶ掘り起こそうとした私小説のようで、なんともやるせなく、それゆえにこその強い引力を持っています。レーベルオナーのスハラさん(bass)をはじめ、ズンダスまさを(drums/ちんぷんかんぷん)、岡本千明(violin/ex夢中夢)、タジマアヤ(piano/ノイズわかめ)という布陣の演奏も絶妙なバランス。なにかが始まる予感に満ちた一枚です。


6.YeYe / 朝を開けだして、夜を閉じるまで
http://www.sunrain-records.com/catalog-3537.html
シンガーソングライター、そして作品中すべての楽器をじぶんで演奏するマルチプレイヤーでもあるYeYe。クボタマサヒコ(BEAT CRUSADERSkuh)氏の主宰するCAPTAIN HAUSからのリリースだったり、後藤正文ASIAN KUNG-FU GENERATION)氏のソロ作品に参加したりと、各所で話題の彼女ですが、この、満を持してのデビュー作はその魅力がたっぷり詰まっているのに、まだまだ引き出しがありそうな末恐ろしさも垣間見せる、絶妙としか言いようのない8曲入り。透明度の高い声がキラキラしたサウンドに乗っかり、頭の上に広がってゆくこの感じは、誰もが好きにならざるを得ませんね。日本語詞なのにどういうわけか洋楽の匂いがしてくるのも、かのフリッパーズ・ギターさえ彷彿とさせます。大器でしょう。うん。


7.ゑでぃまぁこん / 残光の蟲
http://www.sunrain-records.com/catalog-3480.html
姫路発・国内アシッドフォークの最高峰=ゑでぃまぁこんからスタジオ録音盤の新作が到着です。2011年8月から9月にかけて録音された珠玉の4曲。ゑでぃさんとまぁこんさん2人での曲から、楯川・元山・朝倉という鉄壁の布陣で録音された曲まで、あっという間ながら実に濃密な時間。この人たちほどに、音楽そのものを「うたわせる」ことが出来るグループはそうそういないだろうと思います。人気のライブ盤『魚小屋にて喉ならす』と併せてお楽しみください。


8.bed / still dawn EP
http://www.sunrain-records.com/catalog-3525.html
京都を拠点に、いまや全国区で中毒者を多数生みだしつつあるインディロク4人組bedの最新作。STIFFSLACKからの7インチ・アナログとなります。2人のソングライター・ボーカリスト・ギタリストを擁する彼らの強みは、なによりその楽曲の多様さにあると思います。USインディ〜エモ〜ポストハードコアのエッセンスが丁寧に込められつつも、渋い曲は心を深いところで波立たせるように、ポップな曲はジャンルや文脈を越えてたくさんのひとに届くように、見事な幅広さと説得力を備えての仕上がりになっているのは、気心の知れたメンバーたちが、あくまで自分たちのペースで&バンドの向かう先を見据えての、妥協ない創作の成果でしょう。
また、それぞれの個性を生かしたアンサンブルも、見え隠れする録り音に対するこだわりも、そして内省と枯淡とエモーションを絶妙なバランスで鳴らす日本語詞の味わいと遊び心も、安心して彼らの世界に身をゆだねることが出来る程に確立された、これぞ"bed"な一枚。MP3ダウンロードクーポン付きで、アナログプレイヤーのない人にも安心。限定500枚、ナンバリング入りというのも心をくすぐります。


9.minamitetsu / 詩人・南哲の最期
http://www.sunrain-records.com/catalog-3524.html
よしむらひらくも在籍する東京のトリオによる1st DEMOが入荷。よしむら君の他は、宮原琴音(Bass&Vox)、金川卓矢(Drums)という3人によって結成されている、ということ以外はほとんど情報のないバンドですが、曲の完成度は非常に高いです。よしむら氏のソロ作に比してロック色が強く、ささくれ立った音質も、ダメダメな感じの(これ、褒めことばですよ!)歌詞も、いろんな要素がよくマッチしていて◎。あまりライブもしないバンドのようですが、機会があればぜひ観てみたいです!


10.長谷川健一 / 20100516 live at UrBANGUILD
http://www.sunrain-records.com/catalog-3479.html
谷川健一・これまでライブ会場限定だった2枚組CDR。タイトルの通り、2010年5月16日、京都UrBANGUILDでのワンマンライブからセレクトした18曲。比較的新しい曲〜定番曲が中心のDISC1、昔の曲やワンマンならではの曲が多めのDISC2と、なんとも豪華な2枚組。UrBANGUILD特有の音響は、ハセケンの歌と呼応してまるで聖堂のように聴こえてきます。事情によりこれまでライブ会場でしか販売されていなかった作品、満を持してサンレインでも取り扱い開始です!!


次点.シャムキャッツ / GUM
http://www.sunrain-records.com/catalog-3509.html
ファーストアルバムリリース後、『渚』『サマーハイ』と、二枚のシングルを出すごとに着実な躍進を遂げてきた感のあるシャムキャッツ、満を持してのセカンドアルバムが到着しました。
イマジネーションとユーモアに満ちた日本語詞、音楽的な冒険と引き出しの多さ(ボーカル夏目君はインストのレゲエ・バンドもやっているのだそうです)、バンドとしての一体感、いろんなところから20代らしからぬ渋さ⇔やんちゃさを聴きとることが出来る、キャッチーにして味わい深い快作。2011年のトーキョーがここで鳴っています。



 さて、先月のおさらいをしたところで、明日は2011年を振り返ってみようかと。久しぶりにブログの連投予告。これでサボれなくなりました…お楽しみに!