2011年 BEST20

 2011年に、もっとも売れた20作品を掲載します。
 INDIES ISSUEの1月号にも寄稿しているのですが、諸事情によりMIXは割愛していますので、こちらが本物ということで。


1 福原希己江 / のろのらのらねこ(鳥獣虫魚)
2 WATER WATER CAMEL / 分室(Gondwana Label)
3 森ゆに / 夜をくぐる(PERFECT MUSIC)
4 ゆーきゃん / ロータリー・ソングズ(術ノ穴)
5 Alfred Beach Sandal / One Day Calypso(鳥獣虫魚)
6 鳴海徹朗 / 美しい叫び(nor thmall lab)
7 根本敬 / 愛駅(BLACK SMOKER)
8 SARUDOG FROM MU-STARS / SF!SERIES! vol.2 (カクバリズム
7 シャムキャッツ / BGM(自主制作)
8 シグナレス / NO SIGNAL(felicity)
9 BING / HOMENAJE A LA MUSICA COLOMBIANA(HE!XION TAPES)
9 Jesus Fever / Dozens Of Great Views(GREEN RECORD)
10 ZINE / STORY WRITER vol.6(STORY WRITER)
11 王舟 / Thalland(鳥獣虫魚)
12 王舟 / 賛成(鳥獣虫魚)
12 シラオカ / シラオカ(自主制作)
14 洞 / まぼろし(これレコード)
15 麓健一 / コロニー(kiti)
16 ゑでぃまぁこん / 魚小屋にて喉ならす(PONG-KONG RECORDS)
17 埋火 / ジオラマP-VINE
18 永田一直 / 永田一直の和製レガエとダブ(HONCHO SOUND
19 yumbo / これが現実だ(7e.p.)  
20 Shhhhh / Sol de Medianoche (BLACK SMOKER)


 2011年に起こったことが、音楽の世界―とくにサンレインで扱っているような音楽シーンに―どのような影響を及ぼしたのか、まだはっきりと見えてきてはいない、というのがぼくの本音です。


 「2011.3.11以降」というキーワードが、たとえば表現の場そのもの、そして創作する側のマインドにある種の問題を投げかけたとして、その「?」の度合いは、いまのところ作り手、聴き手、それぞれの住む土地によって、そして個々人の意識のありかたによってまちまちだといえるでしょう。
 6月11日高円寺デモでのRUMIさんのフリースタイルも、8月15日大友さんや遠藤さんや和合亮一さんが呼びかけて実現した「FUKUSHIMA!」も、FLYING DUTCHMANの「humanERROR」も、七尾旅人さんの「圏内の歌」も、そしてそんなふうに目に見える「かたち」を持たないままモヤモヤを背負って生まれたり消えたりした無数の表現たちが、あの日以降を変えてゆく希望へつながるものなのか―まだまだ予断を許さないいまの日本を取り巻く状況や政情を見るにつけ、安易に"It's gonna be alright"とは言えないと思わざるを得ません。

 ただ、それでも、全国から集まってくる作品を全国に向けて発送する、そんな日々の中で感じるさせられるのは、たとえ音楽が「力」を持っていても、持たなかったとしても、ひとは奏でられずにいられないということ、そして、生きてゆくひとは「音楽」を必要とする、ということです。


 震災以降ぱたっと止んでしまった、東北地方からのオーダーが、翌月になりそのまた翌月になり、やがて季節が変わるにつれ、すこしづつ戻ってきました。いまでは仙台市若林区からも、いわきからも、ときには気仙沼や女川からも、注文をいただきます。


 サンレインで扱われている作品のほとんどは、たとえばセールスという観点からも、たとえば大仰に理想や夢を語る文脈からも、遠くかけ離れています。原発に反対するミュージシャンの作品はたくさん入荷しますが、それでも、彼らの音楽がそのまま「脱/反原発」を謳っているかといわれると、そうでもない。
 それよりも重要なのは、とりとめのない歌も、難解なインストゥルメンタルも、ビートとサウンドを紡いで作られるMIXCDも―つまりはどんな「音楽」でも、いつしか人はそれを聴きたいと思うのだということ、どんな世界になっても音楽がひとのこころを揺さぶることにはきっと変わりがないだろう、ということです。

 声高らかに歌われるメッセージには、たしかに力があります。ぼくはいまでも、YOUTUBEに上がっている9月11日新宿アルタ前でのいとうせいこう×DUB MASTER Xのパフォーマンスの映像を好んでよく見るのですが、あの「廃炉のあとを花で埋めよう」ということばの美しさにはいつも涙がにじんで仕方ありません。年末の仙台で観たタテタカコさん(5月から毎月、仙台公演をつづけていらっしゃったそうです)のライブは本当に素晴らしく、まっすぐにただ放たれる彼女のことばの真摯さや優しさが、ひとびとをどれだけ勇気づけたのかを思うにつけ、鳥肌が引きませんでした。
 ただ、それと同時に、ことばや音楽が持っている可能性やポテンシャルとは、けっしてそんな風にストレートで、スケールの大きなものだけではないことを、今年ほど強く感じた一年はなかった―それが、2011年のぼくがあらためて見つけた、大切なことだったのも、確かなのです。


 2012年はどうなるのか―じつは、それについてはちっともわかりません(ごめんなさい。昨日ツイッターで「今年の展望まで書きたい」とつぶやきましたが、そんなことハナから無理でした)。上記の文章も、どちらかというとぼく個人の感慨で、総括ではありませんね…

 ただ、こじつけを承知で書くと―


青森県黒石市のシンガーソングライター鳴海徹朗君の、弘前のレーベルno thmall labからリリースしたCD-Rが、京都のシンガーソングライター長谷川健一さんがサンレインに紹介してくれて、結果2011年のチャート6位に輝いた

・長野を中心に活動するグループ・洞のセカンドアルバムが入荷するたびに即完を繰り返し、彼らの主宰するレーベルこれレコードの作品はリリースされるたび話題となった(サンレインだけではなくて、JETSET京都の実店舗でも大きな反響があったそうです)

・山梨在住のWATER WATER CAMELが、高知とのつながりを育ててゆく中で、モロコやoono yuukiといった高知出身のアーティストの作品を買ってくれたひとが、やがてWATER WATER CAMELにたどり着く、ということが多くあった(さらには、エンジニアのつながりなどで森ゆにのアルバムまで至るケースも)


 チャートの中だけでも、昨年はこういう「地方」と「地方」がサンレイン経由で結びつく兆しがあちこちに見てとれました。2012年がどういう年になるか、というより、どういう年にしたいかという答えに近いですが、もっと耳を澄まし、眼を凝らし、もっと自信をもって「オススメです!」と胸を張って、「地方」と共鳴してゆくつもりです。あとは、ぼく自身がSSWなので、どうしてもSSWものやうたものが強くなってしまうのですが、それいがいの作品も届くべきひとに届くよう、いろいろ工夫して行けたらいいなあ。


 なにはともあれ、まずは若干溜まり気味の委託希望CDRから聴きはじめなきゃ!今年もがんばります。どうぞよろしくおねがいします。