チャート更新 2012年1月

 1月があっという間に過ぎてしまいました。このスピードで1年が過ぎられたら、なんにもしないうちに来年になってしまう!と少々焦っております。
 1月のチャート、純然たるニューリリース/新入荷作品は『惑星のかぞえかた EP』と、『永田一直の世界 DJ MIXシリーズ Vol.13』。正確には『惑星のかぞえかた EP』は去年9月に完成していたそうなのですが、完全手作りにつき、納品までにやや時間がかかってしまったのでした(現在も売り切れ、再オーダー中です。お待ちください)。南池袋ミュージックオルグの宮崎君から「ゆーきゃん、絶対好きですよ!」と言われて、はじめて共演させていただいたのですが、しずかに発光しているような静謐な空気に、これはサンレインで紹介しなくちゃ、とすぐに思わされました。
 永田さんの新作はいまさら説明不要の、すばらしい和モノMIX。これでvol.13まで出ていますが、どれもすばらしいです。MIXを聴く習慣のないかたにも、この「歌とグル―ヴと人情」の世界にはいちど触れてみていただきたいなあと。
 再入荷があったのは「シャムキャッツ / BGM」、「土井玄臣 / それでも春を待っている」、そして「nezishiki / Une bande demi-morte」の3作品。シャムキャッツの『BGM』はとくに久しぶりの入荷でしたが、欠品中も問い合わせがたくさんあっただけに、入荷後から現在までコンスタントに売れ続けています。脱力感もいい絵も満載の良作です。
 nezishikiの『une bande demi-morte』はフランスのレーベルからの逆輸入盤。退廃的な感じも漂わせつつ、神経質な痙攣サウンドが畳みかけるようにやってくるのが面白い。最近のサンレインのやわらかな流れのなかで、こういう作品に出合うとハッとさせられます。


 今月も面白い作品がたくさん入荷しますよ!最近、各地で「サンレインのサイトを見てたら、ほしいものが多すぎて、お金がいくらあっても足りない気がしてくる」と言っていただけることがしばしばありあます。嬉しい限りですが、手加減はしません(笑)。ひきつづきどうぞお楽しみに。では、以下、チャートです。


1.福原希己江 / おいしいうた
http://www.sunrain-records.com/catalog-3543.html
羽田出身のSSW・福原希己江による全国流通盤。鳥獣虫魚からの『のろのらのらねこ』、自主制作『笑門来福』という2枚のCDRを経てリリース。天稟としか言いようのない、深み、しなやかさ、強さを湛えた声と、ときにしっとりと、ときにユーモアを交えて表情豊かな織り上げられた歌の世界は、掛け値なしで素晴らしい。特典は、ゆーきゃんによる福原さんへのメールインタビュー「ゆーきゃんからのてがみ」リーフレット


2.シャムキャッツ / BGM
http://www.sunrain-records.com/catalog-3226.html
シャムキャッツ、これまでライブ会場のみで販売していた2009年作のDVDが久々の再入荷。「なんでもないところで演奏したい」という衝動を引きずりながら場所を探し、ついに荒川の河川敷での演奏が実現するまでを追った脱力ドキュメンタリー。マジックアワーに奏でられるシャムキャッツは素敵としか言いようがない!!同年11月8日、乍東十四雄とのスプリット・ツアーで訪れた名古屋鶴舞K.Dハポンでのライブ映像も収録。監督、エリザベス宮地。


3.麓健一 / コロニー
http://www.sunrain-records.com/catalog-3527.html
麓健一、待望のセカンドアルバムが到着!!スッパマイクロパンチョップ、T.T.端子、ホソマリとのバンド編成で、中村宗一郎氏をエンジニアに迎えた、初のスタジオレコーディング・テイクが6曲。書き下ろしの自宅録音が5曲。mmm、oono yuuki、高田正子(にせんねんもんだい)、フジワラサトシといった親しい仲間たちの協力も得て作られたセカンドアルバムは、グル―ヴやアンサンブルの奥行きが増した分だけ、かえって前作よりさらなる混沌と諧謔(自虐すれすれのユーモア)、そしてむきだしの肉体と感受性によるストラグルの軌跡が浮かび上がる、いびつ、かつ愚直な大作だといえます。
ほんとうのことを言うと、できるだけ聴き流さないで、しずかに受け止められる時間にだけ聴きたい。人のたくさんいる場所ではなくて、ひとりの時間に、ひとりの耳で、聴きたい。そんな逸品です。


4.YeYe / 朝を開けだして、夜を閉じるまで
http://www.sunrain-records.com/catalog-3537.html
京都を拠点に活動するフィメール・ソロアーティストによるデビュー盤。シンガーソングライター、そして作品中すべての楽器をじぶんで演奏するマルチプレイヤーでもあるYeYe。クボタマサヒコ(BEAT CRUSADERSkuh)氏の主宰するCAPTAIN HAUSからのリリースだったり、後藤正文ASIAN KUNG-FU GENERATION)氏のソロ作品に参加したりと、各所で話題の彼女ですが、この、満を持してのデビュー作はその魅力がたっぷり詰まっているのに、まだまだ引き出しがありそうな末恐ろしさも垣間見せる、絶妙としか言いようのない8曲入り。透明度の高い声がキラキラしたサウンドに乗っかり、頭の上に広がってゆくこの感じは、誰もが好きにならざるを得ませんね。日本語詞なのにどういうわけか洋楽の匂いがしてくるのも、かのフリッパーズ・ギターさえ彷彿とさせます。大器でしょう。うん。


5.土井玄臣 / それでも春を待っている
http://www.sunrain-records.com/catalog-3522.html
大阪在住のSSWによる新作が、これレコードからリリース!!アコースティックギター、ピアノ、そして柔らかな電子音たちによる白昼夢にも似た皮膜につつまれたサウンド。紡がれる歌詞の淡い情感をそのまま声に変える、リリカルな歌。この7曲入りのCDRのささやかなたたずまいに隠された闇と光の奥行きは、何度も聴き返しても計り知れないものがあります。
同じこれレコードの洞やbavaroisはもちろん、麓健一、oono yuukiら東京のSSWたちとも呼応する感受性。こういう作品と出会えるのが嬉しいです!


6.惑星のかぞえかた / 惑星のかぞえかた EP
http://www.sunrain-records.com/catalog-3559.html
アコースティック・デュオ「惑星のかぞえかた」のファースト・デモ。石坂智子/宮里啓吾のふたりによるデュオ、現在は南池袋ミュージックオルグや八丁堀七針を中心に活動しているようです。ライブの本数もそれほど多くなく、まだ知る人ぞ知る、といった彼らですが、このファースト・デモはお見事!ゑでぃまぁこんやmuffinにも似た、たおやかで滋味あふれる歌声を、アコースティックギター、ささやかなピアノや音響がそっと取り巻きます。すこしトラッドな匂いのするコード進行等は、Sandy DennyやJudee SillといったSSWを彷彿させたりも。素朴な手触りのなかに都会的なスマートさがごくほんのりと醸し出されているのも◎。


7.永田一直 / 永田一直の世界 DJ MIXシリーズ Vol.13 〜和ラダイスガラージ篇〜
http://www.sunrain-records.com/catalog-3569.html
夢のような恋なんてお互いもうできない。歳を重ね、大人になっていた二人。回想が始まる。「優しい言葉で借りを増やさないで」と言い残しホテルの部屋を出る男。夜の高速道路から見える都会の灯り。高速から青山通りへ。心と別の私生活とは?ズベ公からアンニュイへ。時代も変われば女も変わる。時刻は25時。深い夜への入り口。都会のはずが、中近東辺りの紫色の地平線が脳裏に浮かんだ。大都会の朝。国民的大物俳優が歌う、この上ない現代的で都会的な和製ソフトロック。ビルに反射する朝日が眩しい。バブル前夜の東京原宿。化粧品のCMソングですら先鋭的。早過ぎたクラブシーン。一方、同じ化粧品のCMソングでも、70年代はギラギラしていて当たり前。新旧ドメスティック化粧品ディスコ繋ぎ!海外旅行がまだ高かった時代。なんのあても無く空港で行き先を決める不倫カップル。南緯17°タヒチの太陽と波と風にはしゃぐ、ズベ公上がり。80年代の華やかな一コマ。だが、若かった二人には茅ヶ崎の海がお似合いだ。車の中で朝になったら風邪をひいてた事を思い出した。夏でも服は着てしたほうがいい。フェードインするフェイザーまみれのコーラスに誘われ、湘南から未来宇宙空間へ。ディスコサウンドに乗って展開される、清く正しい男女二人組によるコーラスワーク、正義の音とも言える清々しいアナログシンセのソロ。カットインされる超実力派ドラマーのフィルインから始まる、和製エレクトロ絵巻!原宿歩行者天国からニューヨークへ。リズムトラックをデジタルドラムに差し替えただけの当時物のセルフリミックスバージョンに若い血がたぎる。自分の親は60〜70年代に新宿で飲み屋をやっていたんです。その時の常連さんで大部屋俳優の方がいて、赤ん坊の頃の自分をあやしてくれてたそうです。その方が晩年に出されていたレコードが檄エレクトロ!!ダンス!コント!ダンス!コント!口が長いゴムで打撃を受けるユートピア!ノンストップミックスのはずがストップ!?直後、畳み掛けるビート歌謡で、完全に夜のヒットスタジオ状態!!華やかなステージから一転、都会(まち)を離脱した人々へのレクイエムが流れる。この歌の舞台は70年代だが、2011年以降こんなに染み入る歌になるとは。夕方の路地裏、ボロボロになった服を着て顔を腫らした不良少年とすれ違った。「青春なんて言葉には、不様だけがよく似合う」夕日が暮れ、都会にまた夜が来る。


8.ゆーきゃん / ロータリー・ソングズ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3453.html
ゆーきゃん、4年ぶりの流通盤、ソロアルバムとしては実に7年ぶり。高橋健太郎さんの家が取り壊しになる数日前に録音され、ひっそりと眠っていた音源に、田代貴之(bass)、エマーソン北村(key)、見汐麻衣(cho)、そして高橋さんご本人(guitar,etc...)と、ゲストプレイヤーの見事な力添えを得て出来上がった5曲に、ホーム・京都UrBANGUILDでのライブを収録した全6曲入り。アートワークは京都在住の画家・足田メロウ氏。かねてから親交のあるトラックメーカー・FRAGMENT主宰の術ノ穴よりりリースです。


9.nezishiki / Une bande demi-morte
http://www.sunrain-records.com/catalog-3528.html
福岡のバンドがフランスのレーベルよりリリースしたアルバムが、逆輸入にて入荷。レーベルサイトでもフランス語で「つげ義春の子供たち!!」と書かれていて、なんだかテンションが上がってしまいますが、サウンドはゴリゴリのNEW〜NO WAVE。TELEVISONやJOY DIVISION直系の、硬質で神経質で、かつ耽美さ滲む、18曲の波状攻撃。どの曲もモノトーンなニュアンスで一つの筋が通ってはいても、それぞれの楽曲はアイディア豊富で飽きることなく、ただただ驚いたり圧倒されたりしながら、あっという間に終わってしまいます!


10.よしむらひらく / 2011
http://www.sunrain-records.com/catalog-3523.html
SSWよしむらひらくの新作CDR。象徴的なタイトル、震災後に生まれた5編の独白。ドラムに岸田佳也、ピアノとコーラスにアラカキヒロコを迎えた他はすべて一人で手掛けた、とてもパーソナルでストイックなCDR作品。定評あるソングライティングのセンスも今回はとくにエモーショナル、無駄のないアレンジも素晴らしく、でも最後はやっぱりこの「声」の力だな、と。


次点.dOPPO / 遠雷
http://www.sunrain-records.com/catalog-3447.html
dOPPOの5曲入りEP。Discharming man 蛯名さんの主宰する5Bレコードからリリースされた前作『毒ヘビはいそがない』は高円寺時代のサンレイン・ベストセラーの一枚でした。その後の作品を待っていた方も多いのではないでしょうか。メンバーチェンジや移住などを経て、じつに4年ぶりとなる5曲入りEPがようやく到着。レコーディングはTEASI、GO FISHなどを手掛けた稲田誠さん(棚レコード)。一発録音を基調にしたアナログレコーディングが、メロディライン、歌詞、声、そして演奏の独特な空気感など、dOPPOのオリジナリティを見事に浮き出させています。ゲストミュージシャンにはClimb The Mindでギターボーカルを担当する山内さんがピアノで参加。ジャケは橋本くん本人による切り絵です。