4月号のお話。

5月も半ばになってしまいましたが、先月の月刊サンレインの解説です。
簡単なジャケに簡単なクレジットはしてありますが、どんな曲なんだろう?と気になった方は参考にしてください!
5月号も、まもなく全曲の許諾をいただけそうです。明日には配布開始できるようにもうひと頑張り!
お待ちくださいませ。


月刊サンレイン 2012年4月号『春盤』収録曲解説


1.園部信教/東京の空『旅』 収録

mojocoのボーカリストでもある園部くんが古里おさむさんのプロデュースで制作した自主CD-Rより。すーっと抜けてゆくハイトーンヴォイスが気持ち良いんです。歌詞ではまだ春になりきらない、冬の終わりごろの空を歌っているのですが、南国生まれのこの人の持つ温かみのせいか、4月の空気にとてもよく合うなあと思い、一曲目。


2. Myth Folklore / Smartphone / DEMO CD-R 収録

ex.henry tennisの奥村さんを中心に結成されたソフトロック/インディポップ・トリオによる初音源から。ヘンリーテニス時代から定評のあった奥村さんの作曲力はこのユニットでも花開いており、グッドメロディ、ツボを得たアレンジ、さらには収録の4曲を通じて流れるふわりとした多幸感が大きな魅力です。まずは冒頭を飾る1曲をご紹介します。


3.DJ Doppelgenger / Consciousness Rebel / 『Paradigm Shift』 収録

DJとして世界各地を渡り歩き、唯一無二でで無国籍なスタイルを追求してきたドッペルゲンガー氏の、初となるオリジナル作品から。ベースミュージックの重量感と浮遊するシタールの音色の対比、そしてその周りに塗り重ねられた幻惑させるようなサウンドスケープ、ちょっと毒々しさもある百花繚乱具合が印象的な一曲!


4. MANT / ひとくいそう/ 『MANT』 収録

ogre you assholeの出戸君のお兄さんでもある出戸努さんがフロントマンをつとめる長野/山梨のロックバンドによる自主制作盤から。重さと幻想性を持って立ち上がってくるこの曲は、八ヶ岳周辺の霧がかった景色を思わず想起させるようなイマジナティヴな出来です。このアルバムは、80年代後半から2000年代初頭のUSインディを吸収した上で生み落とされた、日本語ロックの理想的なかたちのひとつだと思います。


5.宝生久弥+カクマクシャカ / きみいろ / 『きみいろ』 収録

東京を拠点とするトラックメイカーと沖縄在住のラッパーによるコラボ作。
哀愁とノスタルジーを艶めいて聴かせる宝生さんのトラックメイクに、エモーションの結晶のようなカクマクシャカさんの声が載ります。どちらが主役というわけでもなく、お互いを(ほとんど意識せずして)引き立たせ合うような理想の共作曲。


6. クガツハズカム / すべて / 『kugatsuhascome』 収録

きのこ帝国のヴォーカル、佐藤さんによるソロユニットのCD-Rより。一度拝見したライブがあまりに素晴らしかったので、まだ入荷予定もないのにお願いし倒して収録させていただきました。このCD-R、きのこ帝国のセルフカヴァー等も収録されており、そちらも非常によい(バンドとはがらりと変わった世界)です。時期は未定ですが、なんとか卸していただこうと思っていますので、お待ちください。


7.シグナレス / クラ / 未発表曲デモ

あら恋meetsゆーきゃん」の自主制作CD-Rには、どの曲が入っているか分からないという当たりくじ的ボーナストラックが収録されていました。この「クラ」はその際に使用された一曲です。ジョーン・バエズのようなプロテスト・フォーク風のメロディと、初期のあらかじめ決められた恋人たちへを特徴づけるようなシネマティックなエレクトロ・ダブが同居した、過剰な情感。


8.LOOLOWNINGEN&THE FAR EAST IDIOTS / 針金の木 /『1st CD-R』 収録*本サンプラーのために新録したテイクです

ex.マヒルノの赤倉くんを中心に結成された4人組の初音源に収録されていた曲ですが、このサンプラーではその後録音しなおした別テイクを収録。その骨の部分はジャーマンロックやカンタベリー系からの影響を強く感じますが、現代詩にも似た、文学性の濃い歌詞の世界も非常に印象的で、とても面白い。「針金の木」」という描写は枯れ木について歌ったのかとも推測できますが、春の夕暮れの少し残酷な匂いにもマッチするなあと思い、今月号に入れてみました。



9. 三村京子 / 空の茜 / 『みんなを屋根に』 収録

現在は活動休止中の三村京子さんの2010年作より。この人の歌は、聴くたびに、深いなあと思います。深いところから聴こえてくるというか。そこにいるはずなのに、もっと体の奥の奥から声が出ているよう、というか。けして「儚い」声質ではないのですが、コトバ遣いやメロディとも呼応しあう不思議なゆらぎがそんな風に感じさせるのかもしれません。個人的に作品中で一番好きな曲を、今月号の最後に持ってこさせて頂きました。