5月号のお話。

さて、間もなく6月号を配布しはじめようかという頃に、先月号のおさらいです。
もうお持ちの方は解説に、まだの方は参考に(1500円以上のお買い上げでバックナンバーのリクエストも受け付けています!)どうぞ。
5月らしい「晴れ」の空気を感じるものをメインでセレクトしています。
サブタイトルは、みんなタッチは違えど、風が吹いているみたいな音楽だなーと、ふと思ったので。



月刊サンレイン 2012年5月号 "A VARIETY OF WIND"
#1 nagaco / can do / "Benjamin"収録
術ノ穴より注目のビートメイカー nagaco のデビュー作が到着。全編を通じて流麗なピアノとしなやかなビート、叙情的なサウンドスケープに覆われた作品ですが、ゲストボーカル参加のうたもの、チップチューンを使ったゲーム音楽エレクトロなど、一筋縄ではいかない意外性がとても面白いです。今回は、アルバムの最後をかざる落ち着いたトーンの曲を収録させていただきました。


#2 ヘスペシャンカ / 雲にのる / "拝啓、無気配"収録
大阪の4人組によるファーストアルバムが、ギューンカセット参加のmediscoより。軽やかでありながらも、どこか霧がかったしっとりさもある音、そのひとつひとつを追いかけているうちに、知らない世界へ迷い込んだような気分になる、不思議な魅力の1枚。収録は、滑るようなアルペジオから始まり、弾けそうで弾けない「引き」の美しさに満ちた一曲です。


#3 TamTam / Stop The Alarm / "Meteorite"収録
平均年齢20代前半のヤング・ダブバンドによるデビュー作から。HAKASE-SUNプロデュースのアルバムは、ヘヴィなダブから攻撃的なダンスホールまでを飲み込んだセンスあふれるミュータント・レゲエの博物館的1枚ですが、そのなかでもいちばん穏やかな表情を見せるラヴァーズ・チューンを収録させていただきました。


#4 Turntable Films / Misleading Interpretations / "Yellow Yesterday"収録
京都の3人組による初のフルアルバムから収録。活動当初からオルタナ・カントリーバンドとしての色が強かった彼らですが、このアルバムではそんな枠から一気に飛び出すような多彩で良質なポップ・ミュージックをこれでもかと展開してくれています。軽快なアコギのカッティングから始まるこの曲は作品の冒頭を飾るにふさわしい高揚感です。


#5 キツネの嫁入り / 結局、そう / "俯瞰せよ、月曜日"収録
こちらも京都の4人組による、セカンドアルバムからの収録となります。アコースティックなサウンドながら、プログレグランジといったジャンルから影響を受けた"異質"さが際立つ音楽を聴かせてくれる彼らの、もっとも先鋭的なマインドが伝わってくるこの曲。ゲストでたゆたう・イガキさんがバイオリンで参加。疾走感あふれる無国籍かつパンキッシュなナンバーです。


#6 3月33日 / 空の真下 / "ミソラシロ"収録
バンド名は3月ですが、彼らの奏でるほどに「春」を見事反映する音楽はないんじゃないか、ときどきそう思います。青い(そしてまだ夏ほどに色濃くない)空の向こう側突き抜けてゆくようなやわらかな歌。初の全国流通盤のジャケットも、活版印刷で青空が映し出されています。収録はまさにそんな彼らの、タイトル通りの一曲。


#7 アラカキヒロコ / 夜の唄 / "かぎりある物語"収録
沖縄県出身のシンガーソングライターによるデビュー・ミニアルバムより。力強く普遍的な「歌」の力を感じさせる彼女の声、そして飾りすぎることなく奇をてらうこともない、プレーンなアレンジが素直にその魅力を花開かせています。こちらに収録したのはミニアルバムの最後を飾る、しっとりと、でも足取り確かな一曲。高音のロングトーンがよいのです。


#8 middle9 / Deja / "Cettia Diphone"収録
先日大阪・服部緑地での主催フェス「room special」も成功させた、関西を代表するインストバンドmiddle9が、3年8カ月ぶりにリリースした新作から。ピアノとヴィヴラフォンのゴージャスかつアトモスフェリックなコード感、リズム隊のタイトなグルーヴ、そしてトランペットのスモーキーでいなせなメロディ、しっとりと洒落ているのに体を揺らしてくる感覚は彼らならでは。まずはこの曲を聴いてみて!


#9 DELTAS / 5月の[魚]/// / "√DL_TS 2"収録
福岡の二人組による自主製作盤から。2台のラップトップとギター、ベースによって組み上げられたDELTASのサウンド。インダストリアルでノイジーで攻撃的な側面と、この収録曲のようなリリカルで優しく繊細な一面が同時にあるところが、彼らの大きな魅力だと思います。この曲で気になったらぜひCD-Rも試してみてください。


#10 マコメロジー / 私の稜線 / "マ コメンタリー"収録
5月号の終わりは、鳥獣虫魚からリリースの、ギターと歌の女子二人組によるデビューアルバムより。静かで、生々しく、コトバも音もどれ一つとして聴きもらせない、緊張感と安らぎが交互に訪れるようなアルバム、そのなかでも一番耳を澄ましたくなる一曲を収録させていただきました。ハーディガーディのきしむようなノスタルジックな音が、生きています。


映像は、マコメロジーのライブ。京都、UrBANGUILDです。