2月号のおはなし。

 先月の月刊サンレインの解説です。もうすぐ配布終了となってしまいまうところにやっとこさ間に合わせたので、どちらかというと種明かし的なものだと思ってください。


 で、解説を書くために今日あらためてジャケを見ていて、ひとつものすごいミスを発見。
 副題となるイメージを「立春」としようと思っていたのに、ジャケを見ると「SYUN-BUN」と、、、、春分の日は3月ですよね。ほんとうは「RIT-SHUN」と書くべきところを、まったく気づかないまま一ヶ月配布していたのです。なぜ一度も「あれ?」と思わなかったんでしょうか。我ながら恥ずかしいです。あわててウェブ上のサブタイトルだけは、訂正しました。が、あとの祭りとはこういうことを言うのですね、、、


 まあ、幸いなことにサブタイトルの間違いは内容になんの影響もありませんので、気を取り直して収録曲解説を。


月刊サンレイン2011年2月号 "RIT-SHUN EDITION"

1.加納良英 / ゆめ / 『BIG MILLE-FEUILLE SESSION』収録

大阪のベースレストリオand Young...では爆音ギターをかき鳴らす加納さんですが、このソロ作品では彼のざっくばらんな人柄、かつ器の大きさを感じることが出来ます。ホームである梅田・ハードレインを使っての、気のおけない友人たちとのセッション。収録曲はライブでもお馴染みの、彼のマニフェスト的な一曲。


2.トゥラリカ / 山猫 / 『苔の祭典』収録

名古屋発、絶妙に脱臼した楽曲とアンサンブルがキモチワルクて非常にキモチイイデビューアルバムより。コトバのセンスも狙っているのか狙っていないのかよくわからず、悪夢のような童話のような不思議な余韻があって、また何度でも聴きたくなってしまうのでした。とりわけ「山猫」って、すごくファンタジックな響きだなあと思いこの曲をチョイス。


3.Love Will Tear Us Apart. / Baimo / 『All You Need is Love Will Tear Us Apart.』収録

おなじく名古屋のバンド、錚々たるメンバーが集まっているこのラヴウィルですが、ボーカル久保田氏の低体温な「うた」がそれぞれの演奏をさりげなく束ねていて、つくづくこれは良いバンドだなあと思わされます。収録は和製ペイヴメントはこの人たちで決まりだろう!と思わせてくれる名曲。


4.niumun / Graphite / 『A Pale Blue Dawn』 収録

ノイズ×エレクトロ×ポストハードコアのアマルガム、暴力的で不穏な空気のなかにある叙情性が非常にうつくしい作品から一曲、おそらくアルバム中でもっともストレートなダンスチューン。そうとうに音圧がありながらも一音一音のツブが気持ちよく仕上がっているのは、流石としか言いようありません。


5.Music From The Mars / texture of tomorrow / 『Living in the zoo』収録

このEP、2007年のサンレイン開店当時から取り扱っている作品です。いなせなシティポップスやAORがよりプログレッシヴに(悪ふざけかと思うほど!)展開してゆき、でも「歌」と「ダンス」は絶対に手放されない…この絶妙なバランスがMFTMの音楽の面白さですが、この曲はまさにその見本。


6.kyooo / 電話/ 『鳥が歌う』収録

鳥獣虫魚からリリースの、女声SSWによるデビューアルバムから一曲。全編を通じて透明感満載の声が素敵、そしてゲストプレイヤーの気の利きまくった演奏がお見事で、飾り気のないフォークソングを沁み入るように堪能できるのですが、なかでもこの、留守電のメッセージを膨らませてできたような歌がとくにチャーミングで、セレクト。


7.山田杏奈 / みるくのちかく / 『カラフル』 収録

コマイヌでも活動する音楽家/シンガーの本名名義でのアルバムから。ダブ処理や電子音を嫌味なくいいスパイスとして使いこなす「歌」の存在感がとても素敵です。ちなみにこのアルバムを聴いてライブを観に行った友人が「いい、としか言いようがない」と報告してくれました。


8.Riow Arai / Adam / 『Graphic Graffiti』収録

リョウアライ、セルフレーベルからのリリースが入荷。ひとつひとつの「音」、サンプリングとループの快楽、全編通じて気持ちよくない場所が一つもない作品ですが、このサンプラーには他の曲とのバランスを考えてコレを。特典の和モノMIX(なんとサンレイン・エクスクルーシヴ!)も反響大です。


9.YOGURT & KOYAS / Rainbow Curved / 『SOUNDS FROM DANCEFLOOR』収録

YOGURT&KOYAS、前作の"CHILL OUT"カヴァーアルバムも素晴らしかったのですが、この"ダンスミュージック"作品もおふたりの「サウンド請負人」
としてのセンスと耳の良さ、そして技術が盤の表から裏まですべてに沁み込んでいます。このサンプラーはMIXではないのですが、個人的にRiow Arai『Graphic Graffiti』から続けて聴くのが大好きなので、この気持ちをみんなに伝えたいと…(笑)


10.Tamas Wells / Signs I Can't Read / 『Signs I Can't Read』収録

ミヤンマー在住・オーストラリア人SSWによる来日公演の模様を収録した限定流通盤より、タイトルチューンを収録。このライブ、観ていた人のからだの隅から隅まで「至福」が行きわたっただろうなあというくらいの好盤ですよ!声が空気に溶けて、どんどん柔らかで済んだものになってゆくのが分かります。


11.ゆーきゃん with his best friends / ラプソディ / 『Sang』収録



2007年リリースの、バンド名義での一枚の冒頭を飾る曲。秋冬物といったテイストのこのアルバムのなかでも、きわだって日差しのあたたかさを感じさせる曲。微量の高揚感、さらっと聞き流せるのが自分でも気に入ってます。



ご注意:「月刊サンレイン」は購入特典です。バックナンバーは1575円以上(送料/手数料は別)お買い上げいただいたお客さんにプレゼントします。(カートにお入れください。リクエストできるバックナンバーは1枚のみです。複数枚のリクエストは無効ですのでご注意ください)

雑記(今日によせて)

 3月10日、デモに行ってきました。
 

 京都は、明日11日に市街地一帯を使ったマラソン大会があるために、そのジャマになるような行動はできなかったのでしょう。そのかわり、ということなのか、前日10日に円山公園で大きな集会がありました。
 集合場所の円山公園音楽堂は12時過ぎからひとでいっぱい。ぼくはサブ会場の枝垂れ桜の下でフリースピーチを見ていました。30代後半のサラリーマンがマイクを握り、「本当のことがわからない。息子になんて言ってあげたらいいのか、わからない」としゃべっていたのがとても印象的でした。
 黙祷を終え、14時50分すぎ、デモがスタート。とくに深い思慮もなく先頭のグループにふらっと入ったのですが、ぼくの前はアイドルグループ「制服向上委員会」のメンバーさん、右隣には京都大学・原子炉実験所助教小出裕章と、気がつけば錚々たるメンツに囲まれての行進…途中で歩道から「ゆーきゃん!」という声を聞いたので、誰だろう、と思って振り返ったところ、METROのオーナーのニックさんとプロデューサーの林さんでした。ちょっと照れましたが、うれしかったです。


 集会やデモは、いわゆる「団体」ぐるみでの参加が多く、いわばもともと意識の高いひとたちが集まってのアピールで、ぼくのように何にも所属していない無所属・一般人の参加(団体といっても、特定の政治信条のものに集まっている人たちばかりではありませんから、そういう意味ではみんな無所属の一般人だったとは思いますが)はそんなに多くなかったのではと思います。U-streamなどでみたあの杉並デモのような盛り上がりはありませんでしたが、それでもほんとうにたくさんの、さまざまなひとが四条通から河原町通りにそって、声を上げながら歩いてゆくさまは頼もしいものがありました。


 デモ自体の感想とはちょっと違うのですが、街を歩きながら(デモは信号と関係なく車道を歩けるので、普段とはちょっと違った景色が見えます)あらためて、ぼんやりとかつはっきりと感じたのは、ぼくらがいつも当たり前だと思っている「日常」がいかに脆い土壌の上に立っているか、ということです。

 大部分のひとにとって今日と同じような「なんでもない日」だった3月10日、翌日に起こる出来事を誰が予想しえたでしょうか。ハードボイルド小説や映画の中で語られる「明日、そんな先のことはわからない」なんていう科白は、ずっと陳腐の象徴のように思ってきたのですが、そこにはある種の確かな感慨もあったのです。もしかすると、ほんとうすぎて陳腐に見えるだけだったのかも。
 予知もできなかった地震津波、さらにそのあとに続く原発事故、そういう出来事を経て(乗り越える、ではなく)1年後の今日へたどり着いた人たちが、相変わらず明日また何が起きるかわからない世界の上で、まだ生きている、生かされているっていうことをどうとらえるのか。
 デモの隊列のなかシュプレヒコールにあわせて「大飯原発を動かさないで」と叫びながら(ええ、どうせ声はちっちゃくて誰にも聞こえなかったと思いますよ!)、その一方でぼくは2012年3月11日14時46分を、どうやって迎えようかと、考えていました。


 追悼の祈り、復興への願い、原発行政への怒り、いろんな思いが渦巻きます。家を流された友人のことも、仕事を失った友人のことも、思いだします。震災のあとウェブ上を覆い尽くした一連の「不謹慎」糾弾ムードで、サンレインの売り上げも激減し、ほんとうに店を畳むしかないんじゃないかと思ったことも思いだしました。それらの気持ちをぜんぶひっくるめて、一年後の明日のあの時間は何をしたらいいのだろう、と。


 去年、さまざまなミュージシャンたちの脳裏をよぎり、口をついて出た「音楽に何ができるのか?」という問いには、結局のところまだ誰も答えられていないように思えます。いや、あるいはやっぱり大友良英さんがおっしゃったように、つまるところ音楽は「無力」でしかないのかもしれません。
 でも、パン屋さんの焼くパンにある「力」や、花屋さんの飾る花にある「力」を「できること」にカウントするならば、ひとを感動させたり、心地よくさせたり、場所を彩ったり、想いを代弁するという点では、音楽にもなんらかの「力」はあるはずで、そして、あってしかるべきだとぼくは思います―そこに経済的な、社会的な影響力があるのかどうかは別の、また個別の話だとして。


 今年、サンレインレコーズとしては、この日のために特別なアクションを起こすことはできませんでした(いや、思いつかなかった、というのが正確かも)。そのかわり、ぼくは個人として、OTOTOYのコンピレーション『PLAY FOR JAPAN 2012』に、キュレイターとして参加します。


http://ototoy.jp/feature/index.php/2012031101

 このコンピは、いわゆる音楽で食っているプロフェッショナルだけではなくて、兼業ミュージシャンも多数参加しています。完全な解答とは言い切れないながらも、2011年3月11日に起こり、いまも続いている出来事に対して「音楽で何ができるか」、答えようとしているひとたちの声や音が集まっていることは間違いありません。また、実際売り上げになれば、ひとつの「力」として働くことも事実です。



 おっと、あれこれ悩みながらことばを選んでいるうちに、日付が変わってしまいましたが―
 本日、2012年3月11日、各地でいろんなイベントがあると思います。どんなふうに今日を過ごすのかはまちまち。あるいは日曜ですが仕事があったりバイトがあったり、何も変わらないような日常を過ごすかたもいらっしゃるかもしれません。でも、今日がどういう一日であっても、それは一年前の一日とは決定的に違っているのです。


 ぼくらは生き残って、生き残されて、残った問題を解決しなくてはならない場所に立っている。それはぼくらの明日のためでもあり、ぼくらの後にやってくるひとたちのためでもあり、あの日いなくなってしまったひとのためでも、あります。デモ隊を指さして笑ったあの中学生も、迷惑そうな顔で追い越して行った原付のお姉さんも、けれどやっぱりおんなじように、過去と今日と未来にはおんなじくらい責任があるはずです。瓦礫のことも、避難の受け入れのことも、原発の再稼働のこともぜんぶ、明日の宿題について、仕事の調子について、曲の出来不出来について考えるように、考えなくてはならない。誰かに任せていては、いけないはずです。


 集会の帰り道、事務所に戻ってくるあいだに、烏丸御池の交差点で見たなんてことのない景色はいつもと同じようにきれいでした(ほんとうになんてことのない、冬の終わりのある日の午後です)。いつか街並みが変わってゆく、あるいは明日突然がらっと姿を変える出来事が起きる、どんなことがあっても、ぜったいにこの眺めを「あたりまえ」だと思わないようにしよう、あらためて、そう思いました。



 (3月11日、ぼくはライブをします。あの地震が起きた時間よりちょっと遅く、15時からの演奏予定です。その15分前、どこにいてどうするのかは、まだはっきり決まっていません。黙祷はするつもりでいますので、ここで前もって「お悔やみを〜」とか、上滑りの口上を書くのはやめておきます。どうか皆さん、今日も有意義な一日でありますように!)


 ちなみに只今のBGMは、ECD『DON'T WORRY BE DADDY』。2曲目「まだ夢の中」のなかの「まちがいなく父親先にいなくなる はたちになるころ70だぞオヤジ」というラインに胸をえぐられております。

チャート更新 2012年2月

 新譜のチャートインが多かったように思いますが、なかでもmmm『ほーひ』、kyooo『鳥が歌う』、ノラオンナ『いいわけイレブン』(厳密には新譜ではなく、新入荷です)と、女性SSWものが3タイトル。フィメール・ヴォーカルの力はここ数年ひしひしと感じているわけですが、昨年後半くらいからは、徐々に、そしてだんだん顕著にSSWが盛り上がってきている気配がしています。しかしみんないい歌うたうなあ。

 一方でRIOW ARAI『Graphic Graffiti』『永田一直の世界 DJ MIXシリーズ Vol.13 〜和ラダイスガラージ篇〜』と、ダンスミュージック/ミックス作品が2枚チャートインするのは久しぶりな気がします。リョウ・アライさんの特典和モノMIXも素晴らしく、これ目当てに買っても間違いない!と断言。どちらも曲はもちろん、「音」がいいんですよね。いい「音」は、それだけでもう「価値」だと思います。

 ほかにはcamera-stylo(カメラ=万年筆)の『COUP D'ETAT』、これは「すごい!」と思った瞬間、すぐに初回入荷分が売り切れてしまいました。もっとたくさん仕入れておけばよかったな…というわけで再入荷待ちです。お待ちくださいね。


 余談になりますが、先月は個人的に引っ越しをしたり、社長と今後のサンレインの運営について話したり、陰ながらですが、いろんなことがありました。もっとできることがあると気づいて、そこに至る道筋をすこしづつ整備してゆこうと、あらためて思ったひと月。2012年、あらためてがんばります。どうぞよろしくおねがいします。


1.mmm / ほーひ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3578.html
前作『パヌー』に引き続き、下田温泉(ドラム)、千葉広樹(ベース)、宇波拓(エンジニア、ギター他)を基本メンバーにして、POPOから江崎將史さんと喜多村朋太さん、とんちレコードからはMC. sirafu & 伴瀬朝彦のお二人、そして青木タイセイさんに鳥獣虫魚の柱谷さんと、気のおけない仲間たちに囲まれて作ったセカンドアルバム。フレンドリーで、茶目っ気がいっぱいな空気がそのままパッケージされています。猫が日向ぼっこしているような、といいますか、あたたかくてやわらかい声の魅力もますます活かされており、ときおり差し挟まれるシリアスな表情にハッとしたり、やんちゃな楽曲がフックになったりしながら、最後まで一気に聴ける一枚。
サンレインとJETSET限定の特典は、シラオカの「微熱」(ゆーきゃんと共同でのカヴァー)+ホライズン山下宅配便「雨の日」の2曲入りCDR。


2.土井玄臣 / それでも春を待っている
http://www.sunrain-records.com/catalog-3522.html
大阪在住のSSWによる新作が、これレコードからリリース。アコースティックギター、ピアノ、そして柔らかな電子音たちによる白昼夢にも似た皮膜につつまれたサウンド。紡がれる歌詞の淡い情感をそのまま声に変える、リリカルな歌。この7曲入りのCDRのささやかなたたずまいに隠された闇と光の奥行きは、何度も聴き返しても計り知れないものがあります。
同じこれレコードの洞やbavaroisはもちろん、麓健一、oono yuukiら東京のSSWたちとも呼応する感受性。こういう作品と出会えるのが嬉しいです。
一度売り切れてしまうと(土井さんご本人の手作りのため)なかなか再入荷しない難易度もかえってまたを魅力増しているかな!?


3.kyooo / 鳥が歌う
http://www.sunrain-records.com/catalog-3579.html
鳥獣虫魚からの2012年初作。kyoooのファーストアルバムが入荷。同じく鳥獣虫魚のSSW・フジワラサトシのアンサンブルにバイオリンとサックスで参加したり、即興と室内楽をテーマにした王舟の実験的なアンサンブルにサックスで参加したりもしているkyoooさんによる初の流通盤。全編を通じて落ち着いたトーンですが、ときに儚く、ときに無邪気に響く歌声が、サッドな感触だったりリラクシンな雰囲気だったり、曲にあわせてに少しずつ色合いを変えてゆくさまが非常に魅力的です。
エンジニアは、たゆたうの『糸波』も手掛けた大城真氏。この小さいけれど豊かな声、こんなふうに表情やニュアンスをそのまま「音源」に閉じ込めるのは、非常に難しかったのではないかと思います。虹釜太郎さんが「大城真さんはテン年代以降もっとも重要なアーティストになる」と予言した人の耳にはやはり脱帽せざるを得ません。
また制作にはフジワラサトシが全面協力、NOb(ケイドロック)oono yuuki、ナガヤマタカオや宮本善太郎といった若き音楽家たちのサポートも、ツボを得て(あるいは絶妙な外しで)楽曲をより豊かに彩っています。
夜の深い時間、あるいは明け方、耳を澄まして聴けば聴くほどにその魅力が増してくるに違いない、小さな名盤だと思います!


4.ゆーきゃん / ロータリー・ソングズ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3453.html
ゆーきゃん、4年ぶりの流通盤、ソロアルバムとしては実に7年ぶりのリリース。高橋健太郎さんの家が取り壊しになる数日前に録音され、ひっそりと眠っていた音源に、田代貴之(bass)、エマーソン北村(key)、見汐麻衣(cho)、そして高橋さんご本人(guitar,etc...)と、ゲストプレイヤーの見事な力添えを得て出来上がった5曲に、ホーム・京都UrBANGUILDでのライブを収録した全6曲入り。アートワークは京都在住の画家・足田メロウ氏。かねてから親交のあるトラックメーカー・FRAGMENT主宰の術ノ穴よりりリースです。


5.camera-stylo(カメラ=万年筆) / COUP D'ETAT
http://www.sunrain-records.com/catalog-3601.html
再生ボタンを押すと同時に始まるパレードのような27分全9曲。職人級でインテリジェントなソングライティング・センス、そしてキラッキラのサウンドメイクが全編のスミからスミまで光りまくっています。大半の曲でゲスト・ヴォーカルを起用するところといい、全編を貫くヨーロッパ~室内楽~映画音楽のような雰囲気といい、ピチカートファイヴを思い出させるなあ…と思っていたら、ゲストヴォーカルには野宮真貴さん。そしてこのユニット名って!ということでもう一人のゲストには鈴木慶一さん。ジャケットの赤、「ホーリーローリーマウンテン」といった曲名はあの名作ゲーム『MOTHER』(音楽:鈴木慶一)へのオマージュでしょうか?こういうひねったエスプリもまた小憎らしいです!
西村ツチカ、payjama、中野友絵、ツツミタニ、佐久間裕太(昆虫キッズ)、babi、吉川英理子(ジョンのサン)といったマンガ家やイラストレーター、ミュージシャンが描き下ろしを提供した8曲分のイラスト・ポストカードもうれしい。
過剰なまでに情報が詰まった、それでいてあっけないほどにスマートでスムースなマジカル・ポップス。これは本当に驚きのデビューアルバムです!!


6.RIOW ARAI / Graphic Graffiti
http://www.sunrain-records.com/catalog-3586.html
RIOW ARAI、キャリア17年目にしての10作目。タイトルは「グラフィカルなサウンドレイアウト」と「グラフィティ=いたずら書き的な自由度」の二つを指し示すそうです。たしかに、サンプリングとループを構造的に組み合わせたスクエアな気持ちよさを保ちながら、音響的な耳への刺激をまるで驚かすように(でも決して痛くはないのです)交えてこられるので、ビートに合わせて体が踊り出すだけではなく精神ごとぐっと引きこまれる感があります。全編ダブミックスレコーディングを行ったというスリリングな作りも納得。それにしても、このアイディアの豊かさとビートの鮮やかさ、あらためて「マエストロ」とはこの人のためにある呼称なのではと思いました!
特典はなんとサンレイン特別仕様。「ゆとり世代のためのニューウェーヴ入門編」スペシャル・和モノMIX CDRです!!


7.永田一直 / 永田一直の世界 DJ MIXシリーズ Vol.13 〜和ラダイスガラージ篇〜
http://www.sunrain-records.com/catalog-3569.html
永田一直の大傑作シリーズ、2012年のリリースは人気国産ダンスミュージックパーティー「和ラダイスガラージ」から生まれた、最新ミックスシリーズ第13弾。このシリーズのレビューは、すべて永田さんが直々に書いてくださっているものです。謎かけのようなテキストですが、まさにその通り、あえてトラックリスト代わりのヒントを暗喩的にちりばめたm昭和歌謡の歌詞みたいな仕様になっています。もうお持ちの方は、あらためて読みながら聴いてみてください。まだの方は、このテキストだけで何の曲が入っているか分かったら、すごい!!

「夢のような恋なんてお互いもうできない。歳を重ね、大人になっていた二人。回想が始まる。「優しい言葉で借りを増やさないで」と言い残しホテルの部屋を出る男。夜の高速道路から見える都会の灯り。高速から青山通りへ。心と別の私生活とは?ズベ公からアンニュイへ。時代も変われば女も変わる。時刻は25時。深い夜への入り口。都会のはずが、中近東辺りの紫色の地平線が脳裏に浮かんだ。大都会の朝。国民的大物俳優が歌う、この上ない現代的で都会的な和製ソフトロック。ビルに反射する朝日が眩しい。バブル前夜の東京原宿。化粧品のCMソングですら先鋭的。早過ぎたクラブシーン。一方、同じ化粧品のCMソングでも、70年代はギラギラしていて当たり前。新旧ドメスティック化粧品ディスコ繋ぎ!海外旅行がまだ高かった時代。なんのあても無く空港で行き先を決める不倫カップル。南緯17°タヒチの太陽と波と風にはしゃぐ、ズベ公上がり。80年代の華やかな一コマ。だが、若かった二人には茅ヶ崎の海がお似合いだ。車の中で朝になったら風邪をひいてた事を思い出した。夏でも服は着てしたほうがいい。フェードインするフェイザーまみれのコーラスに誘われ、湘南から未来宇宙空間へ。ディスコサウンドに乗って展開される、清く正しい男女二人組によるコーラスワーク、正義の音とも言える清々しいアナログシンセのソロ。カットインされる超実力派ドラマーのフィルインから始まる、和製エレクトロ絵巻!原宿歩行者天国からニューヨークへ。リズムトラックをデジタルドラムに差し替えただけの当時物のセルフリミックスバージョンに若い血がたぎる。自分の親は60〜70年代に新宿で飲み屋をやっていたんです。その時の常連さんで大部屋俳優の方がいて、赤ん坊の頃の自分をあやしてくれてたそうです。その方が晩年に出されていたレコードが檄エレクトロ!!ダンス!コント!ダンス!コント!口が長いゴムで打撃を受けるユートピア!ノンストップミックスのはずがストップ!?直後、畳み掛けるビート歌謡で、完全に夜のヒットスタジオ状態!!華やかなステージから一転、都会(まち)を離脱した人々へのレクイエムが流れる。この歌の舞台は70年代だが、2011年以降こんなに染み入る歌になるとは。夕方の路地裏、ボロボロになった服を着て顔を腫らした不良少年とすれ違った。「青春なんて言葉には、不様だけがよく似合う」夕日が暮れ、都会にまた夜が来る。」


8.ノラオンナ / いいわけイレブン
http://www.sunrain-records.com/catalog-3593.html
孤高の女流ウクレレ弾きによるネイキッド・ソングス11編。ウクレレ一本での弾き語り。ボサノヴァやジャズのような響きとコード感を漂わせながら(ナラ・レオンニーナ・シモンを彷彿とさせる瞬間もあり)、中川五郎友部正人といった武蔵野フォークの系譜も顔をのぞかせます。
声とウクレレだけのミニマルなアレンジ、録音空間の鳴りだけを漉し取ったストイックな録音でありながら、ここには聴く者を拒むような厳しさはありません。それどころか、まるで上質のシティ・ポップスのように聴こえてくるのは、彼女の持つ人柄ゆえか、ハスキーで中性的な声の魅力か、有り体かつたくみな詞と楽曲の力か。録音・ミックス・マスタリングは田辺玄(WATER WATER CAMEL)。枚数限定につき、おそらく入荷は一回きりです。お早めにどうぞ。


9.埋火(うずみび) / 恋に関するいくつかのフィルム
http://www.sunrain-records.com/catalog-15.html
埋火、福岡在住時のファーストミニアルバム。
これは優れた歌ものですよ、見汐麻衣の透き通った声にのって伝わってくるのは何の変哲も無い些細な日常の心象風景。何万という日本のバンドが様々な恋の歌を書くが福岡のこのバンドは「I Love You」という常套句を使わずに普遍的なラブソングを書ききっている。サードあたりのベルベットアンダーグラウンドを思い出させる、透明感のあるサウンドを収録したのは同郷のロレッタセコハン出利葉氏(リリースもロレッタのレーベルから)。90年代の福岡オルタナ勢の勃興以前にはこういった曲を演るバンドが多数いたのもかの地、福岡の事実。彼女たちはそんな正統派の流れをくむ最新型。(吉田肇)


10.WATER WATER CAMEL / 分室
http://www.sunrain-records.com/catalog-3132.html
WATER WATER CAMELの限定流通盤。これを「良くない」ということはどう考えても困難なように思えます。山梨に居を移し、生活と音楽を結ぶ小さな試みを重ねる共同体による2010年冬のレポート。うたいだすとそこに静けさが積もってゆくような声、そしてキャンパスに下地を塗り、歌に影を添えるかのようにそっと置かれたギターの表現力、飾り気なく添えられるベースの滋味、ゲストメンバーの人選も申し分なく、どこを切っても静かな感動が溢れだしてきます。デジパックトレイの底に記されたメンバーからのメッセージも素晴らしく(あえてここでは書きません)、ぜひ手に取ってほしい一枚です!!

チャート更新 2012年1月

 1月があっという間に過ぎてしまいました。このスピードで1年が過ぎられたら、なんにもしないうちに来年になってしまう!と少々焦っております。
 1月のチャート、純然たるニューリリース/新入荷作品は『惑星のかぞえかた EP』と、『永田一直の世界 DJ MIXシリーズ Vol.13』。正確には『惑星のかぞえかた EP』は去年9月に完成していたそうなのですが、完全手作りにつき、納品までにやや時間がかかってしまったのでした(現在も売り切れ、再オーダー中です。お待ちください)。南池袋ミュージックオルグの宮崎君から「ゆーきゃん、絶対好きですよ!」と言われて、はじめて共演させていただいたのですが、しずかに発光しているような静謐な空気に、これはサンレインで紹介しなくちゃ、とすぐに思わされました。
 永田さんの新作はいまさら説明不要の、すばらしい和モノMIX。これでvol.13まで出ていますが、どれもすばらしいです。MIXを聴く習慣のないかたにも、この「歌とグル―ヴと人情」の世界にはいちど触れてみていただきたいなあと。
 再入荷があったのは「シャムキャッツ / BGM」、「土井玄臣 / それでも春を待っている」、そして「nezishiki / Une bande demi-morte」の3作品。シャムキャッツの『BGM』はとくに久しぶりの入荷でしたが、欠品中も問い合わせがたくさんあっただけに、入荷後から現在までコンスタントに売れ続けています。脱力感もいい絵も満載の良作です。
 nezishikiの『une bande demi-morte』はフランスのレーベルからの逆輸入盤。退廃的な感じも漂わせつつ、神経質な痙攣サウンドが畳みかけるようにやってくるのが面白い。最近のサンレインのやわらかな流れのなかで、こういう作品に出合うとハッとさせられます。


 今月も面白い作品がたくさん入荷しますよ!最近、各地で「サンレインのサイトを見てたら、ほしいものが多すぎて、お金がいくらあっても足りない気がしてくる」と言っていただけることがしばしばありあます。嬉しい限りですが、手加減はしません(笑)。ひきつづきどうぞお楽しみに。では、以下、チャートです。


1.福原希己江 / おいしいうた
http://www.sunrain-records.com/catalog-3543.html
羽田出身のSSW・福原希己江による全国流通盤。鳥獣虫魚からの『のろのらのらねこ』、自主制作『笑門来福』という2枚のCDRを経てリリース。天稟としか言いようのない、深み、しなやかさ、強さを湛えた声と、ときにしっとりと、ときにユーモアを交えて表情豊かな織り上げられた歌の世界は、掛け値なしで素晴らしい。特典は、ゆーきゃんによる福原さんへのメールインタビュー「ゆーきゃんからのてがみ」リーフレット


2.シャムキャッツ / BGM
http://www.sunrain-records.com/catalog-3226.html
シャムキャッツ、これまでライブ会場のみで販売していた2009年作のDVDが久々の再入荷。「なんでもないところで演奏したい」という衝動を引きずりながら場所を探し、ついに荒川の河川敷での演奏が実現するまでを追った脱力ドキュメンタリー。マジックアワーに奏でられるシャムキャッツは素敵としか言いようがない!!同年11月8日、乍東十四雄とのスプリット・ツアーで訪れた名古屋鶴舞K.Dハポンでのライブ映像も収録。監督、エリザベス宮地。


3.麓健一 / コロニー
http://www.sunrain-records.com/catalog-3527.html
麓健一、待望のセカンドアルバムが到着!!スッパマイクロパンチョップ、T.T.端子、ホソマリとのバンド編成で、中村宗一郎氏をエンジニアに迎えた、初のスタジオレコーディング・テイクが6曲。書き下ろしの自宅録音が5曲。mmm、oono yuuki、高田正子(にせんねんもんだい)、フジワラサトシといった親しい仲間たちの協力も得て作られたセカンドアルバムは、グル―ヴやアンサンブルの奥行きが増した分だけ、かえって前作よりさらなる混沌と諧謔(自虐すれすれのユーモア)、そしてむきだしの肉体と感受性によるストラグルの軌跡が浮かび上がる、いびつ、かつ愚直な大作だといえます。
ほんとうのことを言うと、できるだけ聴き流さないで、しずかに受け止められる時間にだけ聴きたい。人のたくさんいる場所ではなくて、ひとりの時間に、ひとりの耳で、聴きたい。そんな逸品です。


4.YeYe / 朝を開けだして、夜を閉じるまで
http://www.sunrain-records.com/catalog-3537.html
京都を拠点に活動するフィメール・ソロアーティストによるデビュー盤。シンガーソングライター、そして作品中すべての楽器をじぶんで演奏するマルチプレイヤーでもあるYeYe。クボタマサヒコ(BEAT CRUSADERSkuh)氏の主宰するCAPTAIN HAUSからのリリースだったり、後藤正文ASIAN KUNG-FU GENERATION)氏のソロ作品に参加したりと、各所で話題の彼女ですが、この、満を持してのデビュー作はその魅力がたっぷり詰まっているのに、まだまだ引き出しがありそうな末恐ろしさも垣間見せる、絶妙としか言いようのない8曲入り。透明度の高い声がキラキラしたサウンドに乗っかり、頭の上に広がってゆくこの感じは、誰もが好きにならざるを得ませんね。日本語詞なのにどういうわけか洋楽の匂いがしてくるのも、かのフリッパーズ・ギターさえ彷彿とさせます。大器でしょう。うん。


5.土井玄臣 / それでも春を待っている
http://www.sunrain-records.com/catalog-3522.html
大阪在住のSSWによる新作が、これレコードからリリース!!アコースティックギター、ピアノ、そして柔らかな電子音たちによる白昼夢にも似た皮膜につつまれたサウンド。紡がれる歌詞の淡い情感をそのまま声に変える、リリカルな歌。この7曲入りのCDRのささやかなたたずまいに隠された闇と光の奥行きは、何度も聴き返しても計り知れないものがあります。
同じこれレコードの洞やbavaroisはもちろん、麓健一、oono yuukiら東京のSSWたちとも呼応する感受性。こういう作品と出会えるのが嬉しいです!


6.惑星のかぞえかた / 惑星のかぞえかた EP
http://www.sunrain-records.com/catalog-3559.html
アコースティック・デュオ「惑星のかぞえかた」のファースト・デモ。石坂智子/宮里啓吾のふたりによるデュオ、現在は南池袋ミュージックオルグや八丁堀七針を中心に活動しているようです。ライブの本数もそれほど多くなく、まだ知る人ぞ知る、といった彼らですが、このファースト・デモはお見事!ゑでぃまぁこんやmuffinにも似た、たおやかで滋味あふれる歌声を、アコースティックギター、ささやかなピアノや音響がそっと取り巻きます。すこしトラッドな匂いのするコード進行等は、Sandy DennyやJudee SillといったSSWを彷彿させたりも。素朴な手触りのなかに都会的なスマートさがごくほんのりと醸し出されているのも◎。


7.永田一直 / 永田一直の世界 DJ MIXシリーズ Vol.13 〜和ラダイスガラージ篇〜
http://www.sunrain-records.com/catalog-3569.html
夢のような恋なんてお互いもうできない。歳を重ね、大人になっていた二人。回想が始まる。「優しい言葉で借りを増やさないで」と言い残しホテルの部屋を出る男。夜の高速道路から見える都会の灯り。高速から青山通りへ。心と別の私生活とは?ズベ公からアンニュイへ。時代も変われば女も変わる。時刻は25時。深い夜への入り口。都会のはずが、中近東辺りの紫色の地平線が脳裏に浮かんだ。大都会の朝。国民的大物俳優が歌う、この上ない現代的で都会的な和製ソフトロック。ビルに反射する朝日が眩しい。バブル前夜の東京原宿。化粧品のCMソングですら先鋭的。早過ぎたクラブシーン。一方、同じ化粧品のCMソングでも、70年代はギラギラしていて当たり前。新旧ドメスティック化粧品ディスコ繋ぎ!海外旅行がまだ高かった時代。なんのあても無く空港で行き先を決める不倫カップル。南緯17°タヒチの太陽と波と風にはしゃぐ、ズベ公上がり。80年代の華やかな一コマ。だが、若かった二人には茅ヶ崎の海がお似合いだ。車の中で朝になったら風邪をひいてた事を思い出した。夏でも服は着てしたほうがいい。フェードインするフェイザーまみれのコーラスに誘われ、湘南から未来宇宙空間へ。ディスコサウンドに乗って展開される、清く正しい男女二人組によるコーラスワーク、正義の音とも言える清々しいアナログシンセのソロ。カットインされる超実力派ドラマーのフィルインから始まる、和製エレクトロ絵巻!原宿歩行者天国からニューヨークへ。リズムトラックをデジタルドラムに差し替えただけの当時物のセルフリミックスバージョンに若い血がたぎる。自分の親は60〜70年代に新宿で飲み屋をやっていたんです。その時の常連さんで大部屋俳優の方がいて、赤ん坊の頃の自分をあやしてくれてたそうです。その方が晩年に出されていたレコードが檄エレクトロ!!ダンス!コント!ダンス!コント!口が長いゴムで打撃を受けるユートピア!ノンストップミックスのはずがストップ!?直後、畳み掛けるビート歌謡で、完全に夜のヒットスタジオ状態!!華やかなステージから一転、都会(まち)を離脱した人々へのレクイエムが流れる。この歌の舞台は70年代だが、2011年以降こんなに染み入る歌になるとは。夕方の路地裏、ボロボロになった服を着て顔を腫らした不良少年とすれ違った。「青春なんて言葉には、不様だけがよく似合う」夕日が暮れ、都会にまた夜が来る。


8.ゆーきゃん / ロータリー・ソングズ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3453.html
ゆーきゃん、4年ぶりの流通盤、ソロアルバムとしては実に7年ぶり。高橋健太郎さんの家が取り壊しになる数日前に録音され、ひっそりと眠っていた音源に、田代貴之(bass)、エマーソン北村(key)、見汐麻衣(cho)、そして高橋さんご本人(guitar,etc...)と、ゲストプレイヤーの見事な力添えを得て出来上がった5曲に、ホーム・京都UrBANGUILDでのライブを収録した全6曲入り。アートワークは京都在住の画家・足田メロウ氏。かねてから親交のあるトラックメーカー・FRAGMENT主宰の術ノ穴よりりリースです。


9.nezishiki / Une bande demi-morte
http://www.sunrain-records.com/catalog-3528.html
福岡のバンドがフランスのレーベルよりリリースしたアルバムが、逆輸入にて入荷。レーベルサイトでもフランス語で「つげ義春の子供たち!!」と書かれていて、なんだかテンションが上がってしまいますが、サウンドはゴリゴリのNEW〜NO WAVE。TELEVISONやJOY DIVISION直系の、硬質で神経質で、かつ耽美さ滲む、18曲の波状攻撃。どの曲もモノトーンなニュアンスで一つの筋が通ってはいても、それぞれの楽曲はアイディア豊富で飽きることなく、ただただ驚いたり圧倒されたりしながら、あっという間に終わってしまいます!


10.よしむらひらく / 2011
http://www.sunrain-records.com/catalog-3523.html
SSWよしむらひらくの新作CDR。象徴的なタイトル、震災後に生まれた5編の独白。ドラムに岸田佳也、ピアノとコーラスにアラカキヒロコを迎えた他はすべて一人で手掛けた、とてもパーソナルでストイックなCDR作品。定評あるソングライティングのセンスも今回はとくにエモーショナル、無駄のないアレンジも素晴らしく、でも最後はやっぱりこの「声」の力だな、と。


次点.dOPPO / 遠雷
http://www.sunrain-records.com/catalog-3447.html
dOPPOの5曲入りEP。Discharming man 蛯名さんの主宰する5Bレコードからリリースされた前作『毒ヘビはいそがない』は高円寺時代のサンレイン・ベストセラーの一枚でした。その後の作品を待っていた方も多いのではないでしょうか。メンバーチェンジや移住などを経て、じつに4年ぶりとなる5曲入りEPがようやく到着。レコーディングはTEASI、GO FISHなどを手掛けた稲田誠さん(棚レコード)。一発録音を基調にしたアナログレコーディングが、メロディライン、歌詞、声、そして演奏の独特な空気感など、dOPPOのオリジナリティを見事に浮き出させています。ゲストミュージシャンにはClimb The Mindでギターボーカルを担当する山内さんがピアノで参加。ジャケは橋本くん本人による切り絵です。

2011年 BEST20

 2011年に、もっとも売れた20作品を掲載します。
 INDIES ISSUEの1月号にも寄稿しているのですが、諸事情によりMIXは割愛していますので、こちらが本物ということで。


1 福原希己江 / のろのらのらねこ(鳥獣虫魚)
2 WATER WATER CAMEL / 分室(Gondwana Label)
3 森ゆに / 夜をくぐる(PERFECT MUSIC)
4 ゆーきゃん / ロータリー・ソングズ(術ノ穴)
5 Alfred Beach Sandal / One Day Calypso(鳥獣虫魚)
6 鳴海徹朗 / 美しい叫び(nor thmall lab)
7 根本敬 / 愛駅(BLACK SMOKER)
8 SARUDOG FROM MU-STARS / SF!SERIES! vol.2 (カクバリズム
7 シャムキャッツ / BGM(自主制作)
8 シグナレス / NO SIGNAL(felicity)
9 BING / HOMENAJE A LA MUSICA COLOMBIANA(HE!XION TAPES)
9 Jesus Fever / Dozens Of Great Views(GREEN RECORD)
10 ZINE / STORY WRITER vol.6(STORY WRITER)
11 王舟 / Thalland(鳥獣虫魚)
12 王舟 / 賛成(鳥獣虫魚)
12 シラオカ / シラオカ(自主制作)
14 洞 / まぼろし(これレコード)
15 麓健一 / コロニー(kiti)
16 ゑでぃまぁこん / 魚小屋にて喉ならす(PONG-KONG RECORDS)
17 埋火 / ジオラマP-VINE
18 永田一直 / 永田一直の和製レガエとダブ(HONCHO SOUND
19 yumbo / これが現実だ(7e.p.)  
20 Shhhhh / Sol de Medianoche (BLACK SMOKER)


 2011年に起こったことが、音楽の世界―とくにサンレインで扱っているような音楽シーンに―どのような影響を及ぼしたのか、まだはっきりと見えてきてはいない、というのがぼくの本音です。


 「2011.3.11以降」というキーワードが、たとえば表現の場そのもの、そして創作する側のマインドにある種の問題を投げかけたとして、その「?」の度合いは、いまのところ作り手、聴き手、それぞれの住む土地によって、そして個々人の意識のありかたによってまちまちだといえるでしょう。
 6月11日高円寺デモでのRUMIさんのフリースタイルも、8月15日大友さんや遠藤さんや和合亮一さんが呼びかけて実現した「FUKUSHIMA!」も、FLYING DUTCHMANの「humanERROR」も、七尾旅人さんの「圏内の歌」も、そしてそんなふうに目に見える「かたち」を持たないままモヤモヤを背負って生まれたり消えたりした無数の表現たちが、あの日以降を変えてゆく希望へつながるものなのか―まだまだ予断を許さないいまの日本を取り巻く状況や政情を見るにつけ、安易に"It's gonna be alright"とは言えないと思わざるを得ません。

 ただ、それでも、全国から集まってくる作品を全国に向けて発送する、そんな日々の中で感じるさせられるのは、たとえ音楽が「力」を持っていても、持たなかったとしても、ひとは奏でられずにいられないということ、そして、生きてゆくひとは「音楽」を必要とする、ということです。


 震災以降ぱたっと止んでしまった、東北地方からのオーダーが、翌月になりそのまた翌月になり、やがて季節が変わるにつれ、すこしづつ戻ってきました。いまでは仙台市若林区からも、いわきからも、ときには気仙沼や女川からも、注文をいただきます。


 サンレインで扱われている作品のほとんどは、たとえばセールスという観点からも、たとえば大仰に理想や夢を語る文脈からも、遠くかけ離れています。原発に反対するミュージシャンの作品はたくさん入荷しますが、それでも、彼らの音楽がそのまま「脱/反原発」を謳っているかといわれると、そうでもない。
 それよりも重要なのは、とりとめのない歌も、難解なインストゥルメンタルも、ビートとサウンドを紡いで作られるMIXCDも―つまりはどんな「音楽」でも、いつしか人はそれを聴きたいと思うのだということ、どんな世界になっても音楽がひとのこころを揺さぶることにはきっと変わりがないだろう、ということです。

 声高らかに歌われるメッセージには、たしかに力があります。ぼくはいまでも、YOUTUBEに上がっている9月11日新宿アルタ前でのいとうせいこう×DUB MASTER Xのパフォーマンスの映像を好んでよく見るのですが、あの「廃炉のあとを花で埋めよう」ということばの美しさにはいつも涙がにじんで仕方ありません。年末の仙台で観たタテタカコさん(5月から毎月、仙台公演をつづけていらっしゃったそうです)のライブは本当に素晴らしく、まっすぐにただ放たれる彼女のことばの真摯さや優しさが、ひとびとをどれだけ勇気づけたのかを思うにつけ、鳥肌が引きませんでした。
 ただ、それと同時に、ことばや音楽が持っている可能性やポテンシャルとは、けっしてそんな風にストレートで、スケールの大きなものだけではないことを、今年ほど強く感じた一年はなかった―それが、2011年のぼくがあらためて見つけた、大切なことだったのも、確かなのです。


 2012年はどうなるのか―じつは、それについてはちっともわかりません(ごめんなさい。昨日ツイッターで「今年の展望まで書きたい」とつぶやきましたが、そんなことハナから無理でした)。上記の文章も、どちらかというとぼく個人の感慨で、総括ではありませんね…

 ただ、こじつけを承知で書くと―


青森県黒石市のシンガーソングライター鳴海徹朗君の、弘前のレーベルno thmall labからリリースしたCD-Rが、京都のシンガーソングライター長谷川健一さんがサンレインに紹介してくれて、結果2011年のチャート6位に輝いた

・長野を中心に活動するグループ・洞のセカンドアルバムが入荷するたびに即完を繰り返し、彼らの主宰するレーベルこれレコードの作品はリリースされるたび話題となった(サンレインだけではなくて、JETSET京都の実店舗でも大きな反響があったそうです)

・山梨在住のWATER WATER CAMELが、高知とのつながりを育ててゆく中で、モロコやoono yuukiといった高知出身のアーティストの作品を買ってくれたひとが、やがてWATER WATER CAMELにたどり着く、ということが多くあった(さらには、エンジニアのつながりなどで森ゆにのアルバムまで至るケースも)


 チャートの中だけでも、昨年はこういう「地方」と「地方」がサンレイン経由で結びつく兆しがあちこちに見てとれました。2012年がどういう年になるか、というより、どういう年にしたいかという答えに近いですが、もっと耳を澄まし、眼を凝らし、もっと自信をもって「オススメです!」と胸を張って、「地方」と共鳴してゆくつもりです。あとは、ぼく自身がSSWなので、どうしてもSSWものやうたものが強くなってしまうのですが、それいがいの作品も届くべきひとに届くよう、いろいろ工夫して行けたらいいなあ。


 なにはともあれ、まずは若干溜まり気味の委託希望CDRから聴きはじめなきゃ!今年もがんばります。どうぞよろしくおねがいします。

チャート更新 2011年12月

 すっかり遅くなってしまいましたが、あけましておめでとうございます。
 個人的にスケジュールを詰め込み過ぎて、新年になんてならないんじゃないだろうかとさえ思わされる年の瀬でした。


 でも、冗談ばかりではなく、ほんとうに2012年が来てよかったです。もちろん、去年に起こったことたちには、まだまだ解決から程遠かったり、気を許してはいけなかったりするものばかりが宇山のように積まれているのですが…
 とにかく、世界が終るかも、と思ったあの3月から9カ月を経て、まだ生きて、音楽を奏でたり聴いたりしていられることは、おおげさではなく奇跡のようにも感じられます。みなさん、今年はきっとよい年に、こんどこそ「希望」が空疎なお題目ではなくて、ほんとうに未来に向かってゆくような一年に、しましょう。


 さて、まずは先月のチャートをまとめてみます。
シンガーソングライターものが非常に強い月でした。麓健一土井玄臣の二人の新作は、初入荷から1週間ほどで完売。土井さんのCDRはご本人による手作りのため、再入荷までもう少し時間がかかりそうです。どうぞお待ちください。
 
 嬉しかったのは、bedの7インチがじわじわと出ていること。すこしシーンがずれたサンレインのようなお店で、しかも違った文脈の作品と一緒に彼らの作品が買われているのを見るたび、画面の前で小躍りしています。

 次点以下も、新譜・旧譜織り交ぜていろんな人がいろんなものを探し出してくれた12月。管理人はツアーの合間を縫って、発送の鬼みたいになっていましたが、その甲斐あった月でした!


1.麓健一 / コロニー
http://www.sunrain-records.com/catalog-3527.html
麓健一、待望のセカンドアルバム。スッパマイクロパンチョップ、T.T.端子、ホソマリとのバンド編成で、中村宗一郎氏をエンジニアに迎えた、初のスタジオレコーディング・テイクが6曲。書き下ろしの自宅録音が5曲。mmm、oono yuuki、高田正子(にせんねんもんだい)、フジワラサトシといった親しい仲間たちの協力も得て作られたセカンドアルバムは、グル―ヴやアンサンブルの奥行きが増した分だけ、かえって前作よりさらなる混沌と諧謔(自虐すれすれのユーモア)、そしてむきだしの肉体と感受性によるストラグルの軌跡が浮かび上がる、いびつ、かつ愚直な大作だといえます。
ほんとうのことを言うと、できるだけ聴き流さないで、しずかに受け止められる時間にだけ聴きたい。人のたくさんいる場所ではなくて、ひとりの時間に、ひとりの耳で、聴きたい。そんな逸品です。


2.ゆーきゃん / ロータリー・ソングズ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3453.html
ゆーきゃん、ソロアルバムとしては実に7年ぶりの3枚目。高橋健太郎さんの家が取り壊しになる数日前に録音され、ひっそりと眠っていた音源に、田代貴之(bass)、エマーソン北村(key)、見汐麻衣(cho)、そして高橋さんご本人(guitar,etc...)と、ゲストプレイヤーの見事な力添えを得て出来上がった5曲に、ホーム・京都UrBANGUILDでのライブを収録した全6曲入り。アートワークは京都在住の画家・足田メロウ氏。かねてから親交のあるトラックメーカー・FRAGMENT主宰の術ノ穴よりりリースです。


3.よしむらひらく / 2011
SSWよしむらひらくの新作CDRが入荷しました。象徴的なタイトル、震災後に生まれた5編の独白。ドラムに岸田佳也、ピアノとコーラスにアラカキヒロコを迎えた他はすべて一人で手掛けた、とてもパーソナルでストイックなCDR作品。定評あるソングライティングのセンスも今回はとくにエモーショナル、無駄のないアレンジも素晴らしく、でも最後はやっぱりこの「声」の力だな、と。


4.土井玄臣 / それでも春を待っている
http://www.sunrain-records.com/catalog-3522.html
大阪在住のSSWによる新作が、これレコードからリリース。アコースティックギター、ピアノ、そして柔らかな電子音たちによる白昼夢にも似た皮膜につつまれたサウンド。紡がれる歌詞の淡い情感をそのまま声に変える、リリカルな歌。この7曲入りのCDRのささやかなたたずまいに隠された闇と光の奥行きは、何度も聴き返しても計り知れないものがあります。
同じこれレコードの洞やbavaroisはもちろん、麓健一、oono yuukiら東京のSSWたちとも呼応する感受性。こういう作品と出会えるのが嬉しいです!

*現在入荷待ちです!アーティスト自身による手作り作品ですので、どうぞもうしばらくお待ちください。


5.白波多カミン / ランドセルカバーのゆくえ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3515.html
京都在住、職業は巫女という異色のSSWによるデビュー作がギューンカセットから。マイナーコードを基調にしたポップなメロディと、オーソドックスなアレンジ(グランジ以降のメロディアスな、それ)は、90年〜2000年代前半の海外SSWものを彷彿とさせる(そういえば、ジャケットもあの頃のインディ・レーベル風味です)のですが、その上を突き刺さるように飛んでくる日本語の歌詞は、ひとりの女性が内面に踏み込んで、美しい部分も醜い部分もぜんぶ掘り起こそうとした私小説のようで、なんともやるせなく、それゆえにこその強い引力を持っています。レーベルオナーのスハラさん(bass)をはじめ、ズンダスまさを(drums/ちんぷんかんぷん)、岡本千明(violin/ex夢中夢)、タジマアヤ(piano/ノイズわかめ)という布陣の演奏も絶妙なバランス。なにかが始まる予感に満ちた一枚です。


6.YeYe / 朝を開けだして、夜を閉じるまで
http://www.sunrain-records.com/catalog-3537.html
シンガーソングライター、そして作品中すべての楽器をじぶんで演奏するマルチプレイヤーでもあるYeYe。クボタマサヒコ(BEAT CRUSADERSkuh)氏の主宰するCAPTAIN HAUSからのリリースだったり、後藤正文ASIAN KUNG-FU GENERATION)氏のソロ作品に参加したりと、各所で話題の彼女ですが、この、満を持してのデビュー作はその魅力がたっぷり詰まっているのに、まだまだ引き出しがありそうな末恐ろしさも垣間見せる、絶妙としか言いようのない8曲入り。透明度の高い声がキラキラしたサウンドに乗っかり、頭の上に広がってゆくこの感じは、誰もが好きにならざるを得ませんね。日本語詞なのにどういうわけか洋楽の匂いがしてくるのも、かのフリッパーズ・ギターさえ彷彿とさせます。大器でしょう。うん。


7.ゑでぃまぁこん / 残光の蟲
http://www.sunrain-records.com/catalog-3480.html
姫路発・国内アシッドフォークの最高峰=ゑでぃまぁこんからスタジオ録音盤の新作が到着です。2011年8月から9月にかけて録音された珠玉の4曲。ゑでぃさんとまぁこんさん2人での曲から、楯川・元山・朝倉という鉄壁の布陣で録音された曲まで、あっという間ながら実に濃密な時間。この人たちほどに、音楽そのものを「うたわせる」ことが出来るグループはそうそういないだろうと思います。人気のライブ盤『魚小屋にて喉ならす』と併せてお楽しみください。


8.bed / still dawn EP
http://www.sunrain-records.com/catalog-3525.html
京都を拠点に、いまや全国区で中毒者を多数生みだしつつあるインディロク4人組bedの最新作。STIFFSLACKからの7インチ・アナログとなります。2人のソングライター・ボーカリスト・ギタリストを擁する彼らの強みは、なによりその楽曲の多様さにあると思います。USインディ〜エモ〜ポストハードコアのエッセンスが丁寧に込められつつも、渋い曲は心を深いところで波立たせるように、ポップな曲はジャンルや文脈を越えてたくさんのひとに届くように、見事な幅広さと説得力を備えての仕上がりになっているのは、気心の知れたメンバーたちが、あくまで自分たちのペースで&バンドの向かう先を見据えての、妥協ない創作の成果でしょう。
また、それぞれの個性を生かしたアンサンブルも、見え隠れする録り音に対するこだわりも、そして内省と枯淡とエモーションを絶妙なバランスで鳴らす日本語詞の味わいと遊び心も、安心して彼らの世界に身をゆだねることが出来る程に確立された、これぞ"bed"な一枚。MP3ダウンロードクーポン付きで、アナログプレイヤーのない人にも安心。限定500枚、ナンバリング入りというのも心をくすぐります。


9.minamitetsu / 詩人・南哲の最期
http://www.sunrain-records.com/catalog-3524.html
よしむらひらくも在籍する東京のトリオによる1st DEMOが入荷。よしむら君の他は、宮原琴音(Bass&Vox)、金川卓矢(Drums)という3人によって結成されている、ということ以外はほとんど情報のないバンドですが、曲の完成度は非常に高いです。よしむら氏のソロ作に比してロック色が強く、ささくれ立った音質も、ダメダメな感じの(これ、褒めことばですよ!)歌詞も、いろんな要素がよくマッチしていて◎。あまりライブもしないバンドのようですが、機会があればぜひ観てみたいです!


10.長谷川健一 / 20100516 live at UrBANGUILD
http://www.sunrain-records.com/catalog-3479.html
谷川健一・これまでライブ会場限定だった2枚組CDR。タイトルの通り、2010年5月16日、京都UrBANGUILDでのワンマンライブからセレクトした18曲。比較的新しい曲〜定番曲が中心のDISC1、昔の曲やワンマンならではの曲が多めのDISC2と、なんとも豪華な2枚組。UrBANGUILD特有の音響は、ハセケンの歌と呼応してまるで聖堂のように聴こえてきます。事情によりこれまでライブ会場でしか販売されていなかった作品、満を持してサンレインでも取り扱い開始です!!


次点.シャムキャッツ / GUM
http://www.sunrain-records.com/catalog-3509.html
ファーストアルバムリリース後、『渚』『サマーハイ』と、二枚のシングルを出すごとに着実な躍進を遂げてきた感のあるシャムキャッツ、満を持してのセカンドアルバムが到着しました。
イマジネーションとユーモアに満ちた日本語詞、音楽的な冒険と引き出しの多さ(ボーカル夏目君はインストのレゲエ・バンドもやっているのだそうです)、バンドとしての一体感、いろんなところから20代らしからぬ渋さ⇔やんちゃさを聴きとることが出来る、キャッチーにして味わい深い快作。2011年のトーキョーがここで鳴っています。



 さて、先月のおさらいをしたところで、明日は2011年を振り返ってみようかと。久しぶりにブログの連投予告。これでサボれなくなりました…お楽しみに!

チャート 11/1-11/15

また遅れてしまいましたが、今月前半のチャートです。

谷川健一のライブ盤、Daniel KwonのCD-R、Danro、ゑでぃまぁこんの新作が初チャートイン。どれも歌の力を感じられる傑作ばかりです。

なかでも、Danielさんは、あまりに素晴らしかったので、思わず年末に京都で企画しているイベントに誘ってしまった(彼は東京・西荻窪在住です)ほど。収録曲ではありませんが、YOUTUBEにはライブ映像もたくさん上がっています。


これは七針での演奏。


あと、いまさら言うまでもない気もしますが、ゑでぃまぁこんの『残光の虫』は、国内のインディうたもの好きはぜったいに抑えておいたほうがいいです。この人たちの、派手さはないけれど、まるで霧が体の外側から中にしみ込んでくるように音を"聴かせる"る魅力
は、ちょっと他に類を見ないと思っているのです。


1.福原希己江 / のろのらのらねこ
http://www.sunrain-records.com/catalog-2885.html
2010年春、七針にて、店主であり鳥獣虫魚のオーナでもある林谷氏と、SSW王舟によって録音された音源(1ビットレコーダーでの一発録りだそうです)さらにマスタリングを王舟がほどこし、完成されたというこの作品、とにかく名演!シンプルなギター弾き語りが実にすがすがしく、まぶしく、自然と涙がこぼれそうになります。この清冽さは金延幸子さんや浜田真理子さんの歌にも通じるはず(この音源はもうちょっと親密で、ひっそりとした感じがしますが、それがまたよい!)。七針に行けばこの人の歌をライブで聴けるのだ…と思うと、すこし東京のひとが羨ましいです(笑)。


2.長谷川健一 / 20100516 live at UrBANGUILD
http://www.sunrain-records.com/catalog-3479.html
タイトルの通り、2010年5月16日、京都UrBANGUILDでのワンマンライブからセレクトした18曲。比較的新しい曲〜定番曲が中心のDISC1、昔の曲やワンマンならではの曲が多めのDISC2と、なんとも豪華な2枚組。UrBANGUILD特有の音響は、ハセケンの歌と呼応してまるで聖堂のように聴こえてきます。事情によりこれまでライブ会場でしか販売されていなかった作品、満を持してサンレインでも取り扱い開始です!!


3.埋火 / ジオラマ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3438.html
埋火、待望のセカンド。静けさと微熱の中で揺らぐ歌と音像たち、いつまでもそばに置いておきたくなる大傑作です。 推薦コメントにぼく自身も寄稿していますので、それ以上のレビューは控えさせていただきます。が、名盤「わたしのふね」からさらに飛躍を遂げた一枚は、きっと長く愛される一枚になること間違いありません。すべての「うたもの」ファンに、ぜひ聴いていただきたく思います!


4.ゆーきゃん / ロータリー・ソングズ
http://www.sunrain-records.com/catalog-3453.html
4年ぶりの流通盤、ソロアルバムとしては実に7年ぶりの作品。高橋健太郎さんの家が取り壊しになる数日前に録音され、ひっそりと眠っていた音源に、田代貴之(bass)、エマーソン北村(key)、見汐麻衣(cho)、そして高橋さんご本人(guitar,etc...)と、ゲストプレイヤーの見事な力添えを得て出来上がった5曲に、ホーム・京都UrBANGUILDでのライブを収録した全6曲入り。アートワークは京都在住の画家・足田メロウ氏。かねてから親交のあるトラックメーカー・FRAGMENT主宰の術ノ穴よりりリースです。


5.Daniel Kwon / Don't Look Now
http://www.sunrain-records.com/catalog-3498.html
東京在住・韓国系アメリカ人SSWによる自主制作盤が入荷。ペンシルヴァニア〜石巻西荻窪とじつに多様な場所で、4トラックのカセットMTRをつかって録音されたというこの作品。なめらかで端正なボーカルと、やさしくてポップなメロディは、カート・べッチャーやエミット・ローズといったソフトロックの偉人たちを彷彿させるのですが、捻じれたコードワークや不思議な響きのコーラス、突如として挟まれる奇妙な展開などの随所に挟まれる突飛でユーモラスな仕掛けは、ただものじゃない感じをビシビシ伝えてきます。Lampや王舟、ceroのメンバーとの交流も深いとのこと、深く頷かされる作品。素晴らしい。


6.danro / Demo
http://www.sunrain-records.com/catalog-3497.html
ミワサチコ+drgn(dj drgn、exミー愛さしみ)によるデュオ"danro"の自主制作デモが入荷。ざくざくしたエレキギターと男気あふれるドラム、2つの楽器から繰り出されるのは、90年代以降のUSオルタナティヴ/インディの美味しいところをぎゅっと凝縮したようなラウドななサウンド。ちょっと屈折したコード感が癖になります。その上を透明で伸びのある女声ボーカルが飛んで行く、その声はセクシュアリティ(コケティッシュだとか、セクシーだとかいう形容)を越えたところにある「声」そのものの魅力をダイレクト伝えていて、ノイジーなギターや激しいドラミングとの相性もばっちり。このバンドのコンセプトは「ポテンシャル・ハードコア・ユニット」というらしいのですが、たしかにここを通じて何処へでも行ける、(リスナーとしても)可能性に満ちた音源だと思います!


7.ジョセフ・アルフ・ポルカ / 空からやってきた緑の三本指
http://www.sunrain-records.com/catalog-3448.html
これは良いバンドに出会いました!最近のUSインディ・バンドっぽいアプローチもありつつ、名コンピ『7586』などに抽出された名古屋アンダーグラウンドの空気を自然とまとっていたり、aotoao(主宰はasunaさん)周辺の脱力かつ鋭角なトイ・ポップにも共通する匂いを感じたり…
この幅の広い音楽性と、自分たちの遊びをエンターテイメントに変えるポップさは、サンレインでもお馴染みのceroシャムキャッツ、とんちレコードやこれレコードのバンド達といった、今が旬の東京シーンとも確実に呼応しているのではないでしょうか。名古屋のみならずいろんな場所でライブをされているので、もうご存知の方もいらっしゃると思うのですが、今後も要注目のバンドですね。


8.王舟 / Thailand
http://www.sunrain-records.com/catalog-2947.html
KIP HANRAHAN、Jim O'Rourke、青柳拓次といった音楽家たちにも連なる、アメリカーナ的な、乾いた祝祭の空気。mmmのフルート、フジワラサトシのギター、oono yuukiのトランペットなど、ホームグラウンドである八丁堀・七針で出会った音楽仲間たちが"王舟"というメロディを増幅させ、インスト曲においても、もちろんボーカル曲においても、瑞々しさと大きなスケールを同時にあたえながら「うた」を鳴り響かせています。これはひとりのSSWの作品であると共に、素晴らしい人選で完璧なまでに編み上げられたプロジェクト・ワークであるとも言えるでしょう。4曲入り525円のCDR作品ですが、何度リピートして聴いても一向に飽きが来ません


9.ゑでぃまぁこん / 残光の蟲
http://www.sunrain-records.com/catalog-3480.html
姫路発・国内アシッドフォークの最高峰=ゑでぃまぁこんからスタジオ録音盤の新作が到着です!!2011年8月から9月にかけて録音された珠玉の4曲。ゑでぃさんとまぁこんさん2人での曲から、楯川・元山・朝倉という鉄壁の布陣で録音された曲まで、あっという間ながら実に濃密な時間。この人たちほどに、音楽そのものを「うたわせる」ことが出来るグループはそうそういないだろうと思います。人気のライブ盤『魚小屋にて喉ならす』と併せてお楽しみください。


10.Shhhhh / Sol de Medianoche
http://www.sunrain-records.com/catalog-3421.html
東高円寺の魔窟・GRASSROOTSを根城に奇想天外な音を放出し続けるDJ Shhhhh。ワールドミュージックへの深い造詣に加えて、電子音楽から室内楽の領域まで自在に闊歩しながら、独自の世界を紡いでゆく奇想天外な想像力/想像力。この素晴らしき音物語の中では、いとも簡単に「?」が「!」に変わります。なんとも奇妙なねじれが心地よい、まさに黒煙系のマージナルMIX。ジャケとの世界観の調和が見事!!


次点 野村和孝 / Arete School of Patternalization
http://www.sunrain-records.com/catalog-3433.html
旭川〜シアトルを繋ぐワールド・スタンダードなSSW・野村和孝によるツアー限定CDRを委託していただきました。ご本人の解説・コード譜・歌詞を同封した限定199枚!!このひとは、ただ「英語だから」という次元を越えて、ギターも歌もあのシアトル周辺のオルタナ・フォークの流れを、表面から水底まで見事に呑みこんで消化しているように思えます。ほんのちょっとの味付けに加えた音響のセンスや、これは絶対アソビだろうー?と分かるのに、結局はちゃんと聴かせてしまう音楽力。素晴らしい。